• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 109 / 439 ページ

誕生

 二人で過ごした夏が過ぎ・・香月と香織、そして競翔鳩、一つの転機が訪れようとしていた。本格的な受験体制に入った香月であったが、保存していた例の卵はやっと、仮母によって産声をあげようとしていた。
 そんな日、秋の競翔前の事であった。突然、佐野と、磯川が訪れた。どうやら、秋レース前の敵状視察のようであった。それは落ち着かない佐野の様子からも窺われた。
 磯川は一通り鳩を観察していたが、余り多くを語らなかった。それに反して、佐野からは次から次へと質問が飛び出してくる。
「香月君の所、秋は8羽なのかい?」
「ええ」
「少ないね、幾等種鳩が少ないと言っても、選手鳩からも仔が引けるだろうし、もっと参加出来ると思っていたよ。で・・?白川さんの所のシューマン系は、春かな?」
「ええ、そうです。でも、同交配が3年目を迎えてますので、親鳩も繁殖のピークを過ぎてますから、余り仔を取らないようにしたんです」
「それは、あるね。当り交配も3年目を迎えたら。でも、工夫すれば、学生愛鳩家は他鳩舎から親鳩を借りて来る事も出来るし、そう言う事も一方法だと思うよ。他鳩舎も見てきたけど、秋は凄い羽数になるよ、ねえ、磯川さん」
 佐野が口数の少ないこの日の磯川に、確認を求めた。
「ああ・・俺も12羽の親鳩から30羽仔を引いた。2次に回った分を含めると、来春は、40数羽になる。一応の結果も出たから、後は工夫すれば数十シーズン交配については大丈夫だろう。それより、君の所も種鳩が6羽と言うのは寂しいよね。それに・・秋に参加する鳩を今見てるけど、どうも・・羽の色艶が良く無い。出来が悪いんじゃないのか?」
 磯川は鳩に関しては、一流の目を持っていた。香月も正直に話した。

更新日:2013-07-28 05:24:30