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退職の日に


それから・・・3日後・・・

私は、直属の上司である副学長に・・・
辞表を託した・・・

副学長は、2通の辞表を持って・・・
理事長室を訪ねた。

「失礼します。
理事長、お話が、あります」

理事長のデスクの上に・・・
2通の辞表を置いた・・・。

「これは、どういう事ですか?」

「長い間、大変、お世話になりました。
一身上の都合で、辞めさせて戴きたいと思います」

「私が、お引き止めしても無駄だという事ですか?」

「はい。申し訳ございません」

「もう1通は?」

「私の秘書の分です」

「えっ?なぜ、彼女まで一緒に辞めるんですか?」

「それは、ご自分の胸に手を当てて・・・
よくお考えください」

「なぜだ・・・」

「最後に、1つ、言わせて戴きます。

ご自分の地位や権力を利用して・・・
あなたが、彼女にした事は・・・
セクハラ以外の何ものでもありません。

良くない噂は、すぐに広まります。
私立大学にとって、それは、命取りにもなりかねません。

理事長として、これからも大学経営をなさるのなら
ご自分の言動、行動をよくお考えください。

それでは、失礼致します」


副学長室に、戻って・・・
「ただいま・・・さぁ・・・片付けないと・・・」

「ありがとうございました」

「理事長、慌ててたわよ」

「そうですか・・・片付けましょう・・・」

「13年は、やっぱり重いわね・・・」

「13年の月日が、ですか?」

「ううん・・・荷物がよ・・・」
そう言って、副学長は、笑った。

更新日:2010-01-09 17:31:05

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