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8 病院という別世界

気がついたら病院のベッドだった。

「あ、目が覚めましたね、
佐和さん。
さっきまで鶴見さんがいらしてましたよ。」

看護婦さんに優しく言われた。

…火曜日の午後になっていた。

ぼくは沖縄料理以降の記憶がまったくない。
尋ねたら、
月曜の朝、一郎に担ぎ込まれたらしい。
日曜に一郎が僕を起こしに昼過ぎに部屋へきて、
血ゲロまみれのまくらで昏睡している僕を見つけ、
救急車ではこばれたはいいけど、

…救急ってみなさんご存知のとおりのところなので、
(東京のドラマじゃないよ、
運ばれたことある人はわかるよね。)

とりあえずまた連れ帰って、
月曜日、朝一番で
一郎が昔、通ってたところに
運び込んだらしい。

「…羽根布団…買ったばっかり…」

僕が悔しい気持ちでそういうと、
看護婦さんが呆れて

「まあ、そんなことが心配できるなら大丈夫ですね。」

と言った。
…麻酔が残ってて、またすぐ眠ってしまった。


僕の夏休みはこの入院のふりかえにあてられて、なくなった。
一郎との沖縄旅行はオジャンになり、
僕は一郎に、入院費用の借金ができた。

でも、一郎は勿論、
島村主任や、池畑や、ほかの同僚も
かわるがわるお見舞いに来てくれて
(…病院の食堂のごはんが安くて美味いという事情もあったらしい)
僕は意外と自分が
職場に馴染めていたことを知って、慰められた。

池畑さんがたくさん本を貸してくれて、
僕は生まれて初めて読書に没頭した。
池畑さんのもってるちょいエロなまんがや小説群は、
どれもすごく面白かった。


更新日:2009-05-06 10:56:38

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