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(11) 合言葉

俺は殺し屋じゃない。今さら金で雇われて人殺しなんかする気は、毛頭ない。ただ、ルパンの消息を確かめておきたかった。

あいつらの言うことが出任せかどうか確かめ、ルパンがほんとにどっかに連れ去られたなら、仲間になったふりして行方を捜し、救い出すつもりでいた。

あの一味はギャングやシンジケートではない、何か巨大な組織を感じさせた。俺を拉致し、解放するまでの鮮やかな手口は、今まで出会ったどんな凶悪な組織のやり口にも似ていなかった。

誰を殺そうというのか、そもそも暗殺の手段が他になかったのだろうか。あんなに巨大な組織なら、銃で撃つ以外の何らかの手が打てるはずだ、俺を薬で殺さなかったのも不思議な位だ。

アジトに誰か入ってくる音が聞こえた。この場所を知ってるなら不二子かルパンしか考えられない。

明かりをつけずにソファーに寝転んでいた次元は戸口に立っている男に聞いた。

「合言葉。人生は?」
「華麗なる暇つぶし。」
「俺の好きな野球チームは?」
「レッドソックス。」
「お前の好みの女のタイプ。」
「女なら誰でもいい。」
「よし、入りな。ついでに明かり点けろ。」

ルパンが明かりを点けようと入り口の壁にあるスイッチを押した。とたんにガタンと大きな音がして、入り口の2畳分の床板が落ち、ぽっかり穴があいた。彼らのアジトには必ずこの仕掛けがしてある。

更新日:2012-04-03 20:25:25

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