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博士は身を乗り出した。あの博物館には、これまでずっと偽者が展示されていたはずだ。捜し求めていた物が見られるかと、期待に博士の心は震えた。

不二子はその2枚とは別に、寸分違わない大きさと色のもう1枚一緒に添えた。

博士は紙質をていねいに拡大鏡で調べた。そして首を振っていった。

残念ながら、、と。つまりルパンがルイスから取り返した物も、自分がスミソニアン博物館からこっそり盗み出したものも、ガルベスから渡されたものも、全て後世の贋作者が作った精巧な贋作だと。

まんざら嘘をついているのでもなさそうだ。博士の失望の色で感じ取った。

「3枚のうち、2枚は羊皮紙ですが、残りの1枚は明らかに現代の技術で作り出したまがい物です。」

不二子はふと思った。

もしかしたら、これらは全てルパンが考えた芝居ではないか、と。あの次元にそっくりな若造を騙し、ニセの地図を餌にして彼をおびき出した。

不二子にもニセを掴ませ、3枚揃わないと宝の在りかが分からないなどと出まかせを言って、ここで博士の計画を探らせようとしたのではないかと。

ということは本物はまだ、ルパンの手にあるのだ。

少なくとも不二子を介して博士と何らかの接触を図ろうとしたことは間違いない。ルパンは博士がこの地図に関心を持っていることを以前から知っていた。

ニセ地図を掴ませることで、彼の秘密を探ろうとしている。あたしには、その秘密が明かせないわけがあるのだ。

更新日:2012-10-03 14:20:20

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