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(9) ニセ地図

不二子は日本の自分のアジトに客を呼んでいた。アメリカの高名な化学者であり皮膚移植にたけた外科医、アルバート・ナインシュタイン博士。

世界中の皮膚移植学会の権威たちが、京都の大学に集まって、今シンポジウムが開かれている。不二子の新しいペントハウスはその会場の近くにあった。

3枚の地図のうち、2枚を手に入れた彼女は、彼に鑑定を依頼しようとしていた。念のためにガルベスから受け取った「ほんもの」だという地図も一緒に。

彼は医者である以外に、世界にちらばる古地図を研究するアマチュア研究家としても知られていた。

19世紀に作られた不思議な地図を発見し、スミソニアン博物館に寄贈したのも彼である。不二子は博物館の職員を装って彼に近づき、今までに様々な情報を得てきていた。

「こんな所でまたあなたにお会いできるとは。世の中不思議なものですな。」
「奇遇ですわ。私の祖父が学会に籍をおいているものですから、博士のご来日を知って、ぜひ、自宅へお招きしたいと思いましたの。」
「何とおっしゃいますかな。」
「え?」
「そのお祖父様は?」
「ええっと、京都大学の鎌田作蔵と申します。」
「あの、日本の皮膚移植医学の権威ですか。」
「ええ、あの、早速ですが、お知らせしたように、これをある筋から手に入れたのですが、、、。」

不二子はブリーフケースから2枚の羊皮紙を取り出し、差し出す。

「本物かどうか、見ていただけますか。」

更新日:2020-06-14 13:20:21

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