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(1) 偽者対決

暗闇の中で、二人の男が対峙していた。一人はトレードマークの帽子とあご髭、一人は額の狭いサル面。一人は椅子に縛りつけられて、一人はその男の額に銃をつきつけて。

「殺れよ。」

縛られた男は不敵な笑いを浮かべて言った。

「そうせくなって。天国の階段も地獄の門も、思ってるより楽な道じゃねえぜ。」
「俺があんたなら、引き金にはちゃんと指かけとくな。」
「お前がホントの次元でも、俺はやるときゃ、やる、例のモン出しな。」

次元に見えた男は、今度は凍った笑みを浮かべた。

「次元なら、こんなとこでやすやすとお前に捕まったりすると思うか?」
「かもな。」

サル面でもみ上げのある男の方は余裕の笑みを浮かべて言った。

「だが俺はどっちでもいい、お前が本物だろうとなかろうと、返してもらう。」
「ポケットだ。」

座っている男の上着の内ポケットを探し、くるくると細く巻いた30センチ四方の筒状の紙とそれにクリップでとめてあるメモ用紙を取り出す。ざっと中身を広げて確かめる。

「確かに返してもらったぜ。これでお前は用済みってわけだ。ごくろーさん。」

サル面はそう言うと、今度こそ引き金に指を掛けた。

「くそオ、お前ルパンじゃねえのか!」
「悪かったな、騙しはお互い様さ、あばよ、地獄の門はあちら。」

言いながら、ワルサーをこめかみに押し付けようとする。次元はそれより早く、後ろ手に縛られていた縄を解き、暗闇に転がった。すでに数時間かけて隠し持っていたかみそりで縄を切っていた。

更新日:2015-02-11 01:16:43

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