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俺と海

すぐに船が見えてくる
執事補正とはすごいものだ、しかし実際壱の体術が凄いのかもしれない
遠目から見て甲板に皆は揃っているようだった
礼儀をわきまえて階段から登ると少し違和感があった、その違和感の原因に気づく前に向こうからアクションを起こしてきた
ア「時間ぎりぎりですよ、壱さん」
その声はアインだったが様子がおかしい
容姿がおかしい
声に違いはないが雰囲気からして違っていた
壱「これはアイン君、お待たせしてしまってすみませんでしたね」
アインは位壱と同じ格好をしていた
正確には古典的な執事服
随所にさりげなく主人を引き立てる外しのテクニックが施されていた
何よりも驚くべきは深紅の髪の色
そこには似合わない色眼鏡がかけられていた
壱「…どういうことですか?アイン君」
アイ「私から説明するわ」
少し後ろからカツカツとヒールを鳴らして現れたアイも少し様子が違う
と言っても、傍らに分厚い本が宙に浮いている位だ
腰に手を当てると悪戯そうに唇をゆがませた
アイ「彼はアインじゃないのよ、アイン2よ、その名もツヴァイ!言いづらいから椿よ」
呆然と立ち尽くす壱
よく見るとたぶん同じ様な説明を受けたのだろう笹蒲以外の三人も呆然と立ち尽くしていた
佐々木も教授も居る中、アイには誠に申し訳ないんだが『バカか居る』と言う顔を皆している

分からない人に名前を聞いてからの壱の脳の動き
『アイン2アインツーアインツアイン、ツアインツヴァイ…。なるほど』

椿「と、言うことで壱さんよろしくお願いします」
手を差し出され正気を取り戻した壱はそれを握った
壱ほどの凄腕剣士になると近づくと相手の強さがわかり、また手を握ればどんな使い手かもわかる
いまのアイン、いや椿の強さは常人がみても解るほど…
だと思ったのだが、壱はアインにそもそもそんなに神経を研ぎ澄ませるわけもなく
かわいそうな子を見る目で手を握った
二人の心の中ではこんな感じにとらえていた
椿の場合
椿『壱さんがそんな目を、負けを認めた眼をしている。そうかわかりました、これからはライバル、いやそれ以上ですね』
壱の場合
壱『かわいそうに、アイにやられたのかな、おもちゃみたいにされて、もしかして望んでいたら…後は考えないようにしよう』
なぜか二人は間違ったアイコンタクトを交わしブリッジに向かおうとするとアイが目の前に立ちふさがった
アイ「ちょっと椿!」
椿「しかしアイ様」
アイ「私はそういう風に見えなかったわ」
ふんと鼻を鳴らし
アイ「まぁいいわ、壱!決闘よ!」
人差し指で思いっきり指されているし名指しされている
壱「…ちょっと待ってくださいアイ様…」
アイ「なに、怖じ気づいたの?」
ニタと笑うと壱は手を振り否定する
壱「決闘と言っても、西洋式の様に一定間合いから合図で始まるもの、東洋では文に記載した時間から決闘が始まるもの、また西部では背をつけ振り返り…、と言うものがあります、他にもたくさんの決闘に決闘様式があります、古代では足に鎖を…」
アイ「…うるさい」
壱「はい?」
アイ「うっさいのよあんた」
壱「すみません、これは私の長所でもあり短所でもあるんです、しかし、決闘。と言うものには怖じ気づいていないと理解していただけましたか?」
アイ「まぁね、」
壱「これでも剣士の端くれ、決闘位できなくてどうします」
アイ「う…」
初めてと言っていいだろう、従者が主人に闘気を見せるのは
実際何も見えていない、しかしこの空気に重くのしかかるプレッシャーはアイの口を動かせなくする
壱「どうしましたか?」
アイ「…」
壱「…。じゃあ椿くんブリッジに向かいましょうか」
そう言うと壱と椿は階段をあがろうとする
その手をアイが掴んだ
アイ「決闘よ…、今すぐ、今から決闘よ!」
そう言うと椿の上着の裾がめくられた
そこには自動小銃
アイはとっさにしゃがむと椿は至近距離で壱に引き金を引いた

更新日:2009-04-13 00:14:52

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