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波紋

 誠一と恭二は安全のため、了のパパの所有するマンションに一時避難することになり、翌日は、散々荒らされた図書館を元通りにすることに終日費やされた。床にばら撒かれた本を棚に戻し、机やイスを並べ、パソコンを修理に出し、壊された小物を選別して捨てた。
 いつものように池田の顔を見に来たママさんたちが手伝ってくれたことにより、予定よりは大分早く片付いたが、当日の営業はとうてい無理だった。
「お陰さまで、きれいに片付けることができました。後ほど池田の方から改めてお礼をさせていただきます。本日は誠に有難うございました」
 主婦たちを笑顔で送り出した後、疲れきった三人は真一のことに話が及んだ。
「それにしても、あたしたちに電話くらいくれてもいいよね、真一」
「勝手に出て行くなんて身勝手だよ。いくら安全そうに見えたとしても、実際にまだ危険は残っていたのだし」
 了と美鶴の否定的な意見に対し、芳江だけは違っていた。
「でも、本当にただ安全だと思ったから帰ったのかな? 」
「どういうこと? 彼らの間に何かあったと思うの? 」
「うん……わからないけど、真ちゃん今までそんなわがまま言ったことなかったじゃない。忍者ショーも1回も休んだことないし、それに……」
 芳江は何かを考えるように黙り込んでしまった。
「とにかく、次の忍者ショーにはきっと顔を出すよ」
「もう遅いから、帰ろうよ」
 了と美鶴に促されて、芳江は不承不承重い腰を上げた。

更新日:2009-10-25 16:55:49

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