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「えっ! 姫子が? 」
 美鶴の携帯に誠一から電話がかかってきたのは、日付の変わった午前一時ごろだった。
 姫子は室内のブレーカーを落とし、暗闇のなか二人を恐怖のどん底に突き落とし、恭二が失神したのを確認するとようやく帰ったと誠一は言った。
「それで、真ちゃんはどうしたのよ? 」
「それが……」
 言葉をにごす誠一に、何かあったと感じた美鶴は、了と芳江に連絡し急きょ現場に向かった。
 真っ暗な図書館内は本が散乱し、机や椅子が倒され、ひどいありさまだった。了はすぐにブレーカーを上げ、本を踏まないように注意しながら美鶴と芳江を伴い5階へと向かった。
恭二と誠一のいる505号室は、パソコンの液晶画面がひび割れ、衣服はビリビリに破かれ、ゴミ箱の中身を撒き散らされて足の踏み場もないほどだった。
誠一は呆然としたままで、この惨状を片付ける気力もなく座り込んでいた。
「とにかく、お茶でも飲もうよ」
 美鶴は階下に湯を沸かしに行き、了と芳江は隣の部屋を5人が座れる程度に片付け始めた。504号室では、幸いパソコンの液晶画面は破壊されておらず、キーボードーが真っ二つに折られているだけだった。
 了がソファーを元の位置に戻し、小さな丸いすを三つ並べ、芳江がちぎれたカーテンを回収し、DVDを整理し、二人で拭き掃除を終えたころ美鶴がお盆を抱えて現れた。
「さあ、お茶にしよう」

更新日:2009-09-28 11:13:57

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