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 恭二は次々と新しいデザインを発表した。
 本多忠勝には、トレードマークの鹿の角をつけた兜をかぶり、真っ黒な鎧に金の装飾をあしらった、徳川四天王と呼ぶに相応しい猛々しい衣装を作った。予想以上の出来栄えに、了も美鶴も恭二が本当にデザイナーの卵だということが認識できた。
「なんだか青白い優男も、多少男らしく見えるから不思議なものだよね」
「この姿でケンカに負けでもしたらかっこ悪いよね! 」
 男をめったに褒めることのない了や美鶴と違い、ちびっこのママたちは恥ずかしげもなく恭二に黄色い声援を送った。
「きょうちゃ~ん! 愛してるわよ~!! 」
「ダンナと別れてもいいわよ~ん!! 」
 この甘ったるい声援に後押しされて、恭二の作る服装も次第に明るい色合いを帯びていった。
 本庄繁長の具足は、銀の鎧を金で縁取り、エメラルドグリーンの袖と脛当を付け、実践ではとても役に立ちそうもないような華美な井出たちになっている。
「もしや池ちゃん、戦国時代のゲームにハマってたりして? 何かそんな感じのきらびやかな衣装だよね? 」
 芳江のツッコミに、恭二は聞いて欲しくて仕方がない子供のように、頬を赤らめて答えるのだった。
「聞いてくださいよ! 生まれて初めてオンラインゲームというものをやってみたんですけど、斉藤さんすごいんです。目にも止まらぬ速さで敵をやっつけるので、他のプレーヤーに神様みたいに崇められているんですよ!
 あ、ちなみにぼくは時たまやらせてもらっているだけで満足で、アニメのキャラクターデザインの素晴らしさに見とれちゃうんです!! 」
 芳江は恭二の口から思いがけず誠一の名前が出て驚いたが、同じ建物に住んでいるのだから仲良くなるのは不思議ではないと思い直した。
 それにしても、正反対な二人である。どういう風に関わっているのか想像ができない。
「池ちゃんがおしゃれレベル100だとしたら、斉藤さんはおしゃれレベル5ってとこかな? 池ちゃん、ゲームを教えてもらうお礼として、斉藤さんのファッションセンスも何とかしてあげなよ! 」
 恭二は美鶴の提案に首をかしげ、斉藤との会話を思い出しながらこう言った。
「本人にファッションセンスが良くなりたいという意識がなければ、難しいですねえ……」
 こう言われては、誰も何も言えなかった。
「好きな人でもできれば変わりますよ」
 恭二にそういわれても、斉藤がかわいい女の子と腕を組んで歩く姿をまるで想像できない四人であった。

更新日:2009-09-17 16:56:54

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