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 ショーは、毎週水曜日と土曜日の午後2時から行われた。バク転宙返りなどの派手なアクションは了の担当で、子供の投げる手裏剣の的になることが真一の担当だ。
 真一は得意の“へばりつきスタイル”で、右から左へと上手に逃げて手裏剣をかわした。子供たちも真一にうまく逃げられれば逃げられるほど熱くなり、勢い付いて、しまいには背中に手裏剣を命中させるのだった。真一は「うわ~!」とか「やられた~!」とか言いながら、上手にリアクションを取るので、図書館には小さな子供のファンが増えて行った。
 「何だか、図書館なのか、児童会館なのかわからなくなってきたね。」
 美鶴がそういうのも無理はなく、児童書の全体に占める割合が急増しており、特に忍者の本は≪にんじゃつばめ丸≫やら≪忍者図鑑≫だの、どんどん増えている。それに合わせて、近頃では大輔まで忍者のコスプレをしている。
 「は~いみんな、“にんじゃ道場”に10回つづけてさんかしてくれたお友だちには、“ゴムしゅりけん5まいセット”、20回つづけてさんかしてくれたお友だちには大輔の着ている“にんじゃの衣しょう”をプレゼントするよ!みんなさんかしてね!」
 了の問いかけに、子供たちが大合唱で答える。
 「は~い!」
 真一は自らの軽はずみな行動を心から反省した。
 (参ったなあ。これじゃあ当分手伝わされるよ…。)
 こうして半ば無理やり、真一は4人目のスタッフに仕立て上げられてしまった。

更新日:2009-04-05 23:29:32

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