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『金の斧』の真実

昔、昔。ある森の奥に 

深い深い湖がありました。

そこには、親切で美しい人魚が住んでいました。

その人魚は、人が湖に何かを落とす度に

それを湖のほとりに運びました。

時には、人々に歌を歌い、

湖のほとりは人々の憩いの場となっていました。


ところが、ある金持ちの男が、

湖に大きな網を張り人魚を捕まえようとしました。


しかし、人魚の力に人間の力が敵うはずがありません。

怒った人魚は、湖の底から、

自分の体の何倍もある大きな岩を持ち出し、ほとりへ投げつけました。


それ以来、人間は恐ろしがって、

湖に近づかなくなってしまいました。


そんなある日、湖に金色の斧が落ちてきました。

「きゃ!危ない。」


そう言って人魚が、水面に顔を出すと

湖のほとりには、思いがけず人影が・・・。


「本当に・・・すいませんでした。」

その青年は深々と頭を下げました。


人魚は、困惑しました。

「・・・・・・。あなたは、私が怖くないの?」

「怖いって・・・・?」


彼は、誠実さに溢れた木こりでした。


暫くして、二人は恋仲になりました。


二人は、毎日、湖のほとりで語らい、歌をうたいあいました。


ある日、人魚は言いました。

「私は、人魚の力を全て失って、人間になることが出来ます。

 私は、あなたのためなら、人間になっても構いません。」


すると、青年は暫く黙りこくってしまった。


「近々・・・・・・。」


青年は暫くして、口を開いた

「近々、このあたりで戦争が起こります。

 僕は、戦士として、戦うつもりです。だから・・・・・。」


「だから・・・?」

人魚は、青年を見つめた。


「これを・・・僕の形見として、渡します。

 必ず、戻ってきますから・・・。」

それは、青年が湖に落とした金の斧でした。

更新日:2009-08-08 15:09:00

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イソップ童話『金の斧』の真実 【以前版】