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succession eyes ~重なる世界~ 重なる世界編

コンコン。

理沙「ッ!」

誰かがドアをノックした。
思わぬ痛みにあれだけ叫んだのだ。
近くを通っていれば不審に思っても不思議はない。
理沙にとって問題はそこではない。
問題なのは・・・。

理沙「・・・だれ?」

基地内は絶えず見回りの兵が巡回している。
その兵か? なら対処のしようはある。
それとも聡だろうか? 何か言われるかも知れないが大事には・・・。

マリアンヌ「Miss.リサ、今の声は何かしら?」
理沙「ッ!!」

最悪の相手だ。
マリオネイターは普段、
マリアンヌ達の所属する研究チームの管轄下にある武器庫に保管されている。
持ち出すには上官(大尉)以上の階級を持つ者の許可証が必要だが、
理沙はそれを無断で持ち出していた。

聡なら、もしかすれば上に報告しなかったかもしれない。
しかしマリアンヌにそれは期待できない。知られれば確実に報告される。
その前にマリオネイターを隠さなければ!

理沙「何でもないわ、心配しないで」

返事をしつつマリオネイターを探すが、目が見えず手探りではなかなか見つからない。
急がなければ、と文字通り周りが見えないほど焦っていた。
だから分からなかった・・・頭上から声がするまで。

マリアンヌ「探しているのはこれかしら?」
理沙「えっ・・・」

声はすぐ真上から聴こえた。
焦るあまりにマリアンヌが部屋に入ってきた事に気付かなかったのだ・・・。

マリアンヌ「やはりあなたが持ち出していたのですね」
理沙「・・・っ!」
マリアンヌ「それにしても・・・まさか失明するとは思いませんでしたわ。
      これは本当に予期していなかった副作用ですわね」

理沙「これは・・・」

これは副作用じゃない、と言おうとして、マリアンヌの言葉に違和感を覚えた。
『本当に予期していなかった』
それはつまり、奈々の人格崩壊は予期された事?

理沙「今の・・・どういう事?」
マリアンヌ「え?」
理沙「本当に予期していなかったって・・・奈々がああなるのは予期していたって事?」
マリアンヌ「・・・・・・」
理沙「・・・どうなのよ」

握るこぶしに力が入る。
掴みかからなかったのは目が見えず、それが返って理沙を冷静にさせていたからだ。
と言っても、あと一歩のところで踏み止まっているだけだが。

マリアンヌ「・・・強力な武器に相応の副作用はつきものですわ」
理沙「っ!!」

その言葉を聞き終わるや否や、理沙はマリアンヌに掴みかかった。
だが目が見えないために、その手は軽くあしらわれてしまう。

マリアンヌ「怖いですわぁ・・・口封じでもなさるおつもりかしら?」
理沙「あんただけは・・・殺してやるわっ!」

その時、ドアが勢い良く開けられる音がした。

衛兵A「マリアンヌ様、何事ですか?」
マリアンヌ「違反者です、連行してください」
衛兵B「はっ!」

部屋に入ってきたらしい複数の衛兵に取り押さえられる理沙。
それでもなおマリアンヌに向かって叫ぶ。

理沙「あんたのせいで! あんたのせいで奈々も真希もおかしくなったのよ!!」
衛兵A「何を言っているんだ・・・?」
マリアンヌ「どうやら無断でこれを使ったようですわ。精神が錯乱しているのでしょう」
理沙「許さない・・・許さないわっ! 離してよ!!」
マリアンヌ「ふぅ・・・見るに耐えませんわ。早く連れて行って下さいな」
衛兵B「はっ! さぁ来るんだ!」
理沙「離して! 離してよ!!」

叫びも虚しく、理沙は衛兵の手によって連行された。
後に武器を取り上げられ、鎮静剤が打たれた。

更新日:2009-03-22 13:50:47

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