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「あ、やばっ!」
あまりに「あっち」の世界にのめり込みすぎて、時が経つのをすっかり忘れていた。
閉め出し時間を過ぎれば明日にならない限り、学校から出られなくなる。
教室にかかっている時計を見るとすでに、17時半を過ぎている。締め出し時間は17時45分。後、15分くらいしか残っていない。
「何でそういう大切なこと、もっと早く言ってくれないのよ?」
「30分くらい前から起こしてたよ」
さらりと答える、アインローゼ。
「その度に後ちょっと、後ちょっととか、邪魔とか、鬱陶しいとか、いろいろと言われたけどね」
アインローゼの攻めが始まる。この状態になってしまうと、彼女に勝てる者などいない。
「もう……、わかったってば」
ふらふらする頭を抑えながら急いで起き上がり、帰宅の用意をして、Cyber Trance実習室を後にする。
やばい、後10分。
Cyber Trance実習室から昇降口まで、どう頑張っても8分くらいかかる。
カードリーダーにIDカードを通し、実習室をから退出する。階段を降り、昇降口を出て、急いで昇降口を目指す。
「ちょっと待ってよ!」
少し出遅れて、アインローゼがユーカリの後を追う。ユーカリのペースに追い付こうと必死で走るが、全く追いつけない。
「ユーカリちゃん、早いよ」
「普通だよ。ローゼが遅すぎるんだって。泣き言を言っている暇があったら、早く!」
先を行くユーカリに、アインローゼを待つだけの余裕などない。
「もう……」
仕方ないなと思いながら、アインローゼはスカートのポケットから青く透き通った石を取り出し、ぽつりと呪文をつぶやく。
「Acceleration!」
アインローゼの声に反応し、黄色の石が光輝き、彼女の体を包みこんだ。体が軽くなり、移動が楽になる。
「待ってー」
加速の補助魔法Accelerationの発動で、ユーカリに追いつこうと必死で足を動かす。
「初めからそうしなさいよ」
「そんなこと言われても……」
一応、校舎内での魔法の使用は禁じられている。様々な利害関係上、アインローゼは他の生徒たちよりこのルールを破ると後がうるさいので、実習関係の授業以外では滅多に魔法は使わないようにしている。

更新日:2009-03-16 23:42:22

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