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STAGE0

―無限空間にて―

無限の書棚が続く不思議な空間。
例えて言うならそれは図書館のよう。見渡す限り書棚が続いている。
長い間、人々の侵入がなく、放置され、忘れられた情報の迷宮のようでもある。
<緊急事態、緊急事態。図書館(ライブラリー)の警戒レベルを上げます。警戒レベルを上げます>
静かな図書館には似つかない大音量の放送と、警告音(アラーム)が鳴り響く。
<ただいま警戒レベル4です。ただいま警戒レベル4です。これより-Gate Keeper-プログラムを作動させます。-Gate Keeper-プログラム発動>
侵入者駆除プログラム-Gate Keeper-が発動された。

「はぁ……、はぁ、はぁ……」
迷宮に迷いこんだ少女が一人。
目元をすっぽり覆うゴーグルを装着し、銀の長い棒を手にし、書棚の陰に隠れている。
エリア全域に聞こえるような、けたたましい警報音が鳴り響いている。
何が起こっているのだろう。
とりあえずは今の状況を把握するのが重要だ。
苦しそうに息を切らしながらも、少女は現在の状況を確認するためゴーグルを作動させる。
「探査範囲はこの閲覧室内私を中心に(50.50)区域全て。対象は今発動された-Gate Keeper-プログラム全て」
ピッピッと必要な情報を器用に打ち込んだ。
―解析を始めます。しばらくお待ちください。
ゴーグルはデータ処理を始める。
ふうっ、と少女はため息をつき、額の汗をぬぐった。
「全く、何でこんなところで-Gate Keeper-が発動するのよ」
ここまで来るのに1つ1つ念入りに罠(トラップ)の駆除し、センサープログラムも全て破壊してきた。最新鋭のゴーグルを装備し、自分にしてはこれ以上もない注意力を払ってきたというのに。
ちっ、と少女は舌打ちをしてゴーグルの解析終了を待つ。なかなか解析が終わらないことに苛立ちを隠せない。
簡易解析ならすぐに終わるかもしれないが、それでは全く意味を成さない。
ここは我慢して気長にゴーグルの解析を待っている。

―解析終了。

探査機能付きゴーグルは少女に理解できないような複雑な演算処理を行い、瞬時に解析結果をはじき出した。
-現在一番近いものを4つ、ユーカリ・A・トキノを中心として、(10.15)、(-16.48)、(-5.10)(2.-6)の地点に-Gate Keeper-プログラムが存在します。
ゴーグルは少女、ユーカリだけに聞こえるようアナウンス音を発した後、ゴーグルのパネル上に画像処理したものを映し出す。
「げっ!?」
パネルには、彼女を中心としてすぐ近くに、-Gate Keeper-と書かれた4つの点が映し出された。確実にこちらに向かっているのがわかる。
「う、嘘ぉ。もう見つかったってわけ?」
速い。今までのプログラムよりも処理が速すぎる。
「さすがにさっきのエリアと同じようにいかないか」
ゴーグルの様子を見ながら、すぐ臨戦態勢に入れるようにポーチから3枚のデータを取り出し、銀の棒にあいているスロットに差し込む。
「さぁ、どっからでもかかってきなさい!」
銀の棒を振り回し、ユーカリの周囲の書棚をくるりと力任せになぎ払った。少女の攻撃に耐えられず、書棚がバタバタとドミノ倒しの要領で倒れていく。
周りにあった書棚が全て倒され、彼女の視界をさえぎっていたものが全てなくなった。
<侵入者発見、侵入者発見。直チニ排除プログラムニ切リ替エヨ>
機械音声と同時に閃光(フラッシュ)のエフェクトが放たれる。
「やばっ」
閃光のエフェクトは新たなプログラム出現の合図。光につつまれ-Gate Keeper-プログラムが姿を現す。
「なっ、何これ」
球、長方形、立方体、三角錐など無機質な立体図形を無造作に並べ、組み合わせただけで、外見のテクスチャー処理はされていない。
その殺伐とした外見は、外見を形成するための難しい処理がない分、プログラムのサイズは小さく、いかに命令を素早く遂行されるかを目的とした「命令重視プログラム」になっている。
まずい…、と彼女は思った。
<侵入者を排除スル>
背後から、大きな球体が振り下ろされる。
「わぁっ」
無様に顔面から前にずっこけた。
「痛い…」
そのおかげで何とか-Gate Keeper-プログラムからの攻撃をよけられた。
<侵入者を排除セヨ>
-Gate Keeper-プログラムたちは少女に対して攻撃をやめない。
次から次へと自分を形成している立体図形を投げてくる。

更新日:2009-03-24 10:50:46

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