- 34 / 72 ページ
先生が、静かに入ってきた、落ち着いた様子で、レントゲン写真を、1枚・2枚・並べていく。 私達を じっと見ると、 ・・・ 先生は、レントゲンを 指差しながら 「 この黒っぽく見えるところは、全て血液です ・・ 運ばれたときには、もうご主人の 、脳の 三分の二以上が、血液でいっぱいになっていました ・・ 見て判るように 手術は無理です ・・ お気の毒ですが ・ 覚悟を しておいてください・・・・ 。」 私は何も 考えることができず 、一言 「 ウ ソ 」 先生はすかさず 「 医者は、嘘は 言いません、 病名は・ 脳溢血です ・・・・ 」 わたしは 泣き崩れた、先生はその場を立ち、看護婦さんが 「 今から 患者さんを連れてきます、 I C U に、運びますので、一緒に付いて来て下さい。 」 その言葉に、私は急いで、子供たちと おばあちゃんを 呼びに行った 、泣きながら 「 お父さん もう 駄目だって ・・・・ 今から 集中治療室に 運ぶから 一緒に 来てって ・・・・ 」 聞いた とたん 、あんなに 普段おとなしく、冷静に見えた 奈々が、 病院中に、響きわたる くらいの声で、泣き叫んだ ・・・ 。 私も サナも マナも、 奈々の 「 お父さ~ん お父さ~ん イヤダヨ ~ 」 の大声に 圧倒され、泣く事を 忘れるほどだった、いったいどれほどの 時間だっただろう、 2 分 、 3分 の 事だったろうが、この時間が やけに長く 感じていた 「 落ち着こう 、奈々 、みんな 落ち着いて、お父さん 待ってるから ・・・ お父さんのところに行こう ・・ 」 奈々の肩を 抱きかかえるように、処置室へ向かい 私たちは、 和樹と 対面したのだ 。 和樹は 裸で、白いシーツを掛けられ、眠らされているようだった 、看護婦さんの案内で、 和樹を 乗せたタンカーと、私たちは、エレベーターに乗り、I C U に入った。 そこは、何部屋というよりも、 何室かに、分かれては いるものの、ガラス張りで、かろうじて隣の部屋が、カーテンで見えないように 仕切られている ものだった。 面会時間が決まっており、みんなで、和樹に会えるのではなく、一人ずつ、もしくは 二人ずつしか 、面会できなかった、短い 面会時間、私は和樹に 「 お願いだから 死なないで! ずるいよ、こんなに早く死のうなんて、お父さんどうするの? これから私 どうすればいいの? 最後まで自分勝手に行くの? 」 責めていた、何を 話していいのかわからなかった。 すると 和樹は、何かに 怒ったように、暴れだした。 看護婦さんが 急いで、 駆け寄ってきて 、暴れて 酸素マスクを 、 外そうとする和樹の手足を 、固定しようとした 。 和樹は判っているのか、もっと抵抗しだした、が、その抵抗は空しく終わり、 手足の自由も利かなくなった。 和樹はきっと 、病院で、こうして寝かされている事が、嫌だったんだろう、 病院が 何よりも 大嫌いだったから。 そういえばいつも言っていた ・・ 「 俺は 絶対に、 お前らにも、誰にも、迷惑 掛けないように、ポックリ死ぬからな・・ 」 。
更新日:2009-04-07 10:09:45