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「…あいつは?あいつはどこへ行った!?」

そんなことはどうでもいい、とでも言うかのように、赤い頭の炎を揺らしながら、男の子が詰め寄ってきた。

勢いよく凄まれても、次々と起こる不可思議な出来事に、すっかり混乱してしまっているあたしには、なんのことか一瞬わからなかった。

「あいつってどいつよ?」

「ラピだよ、ラピ!!あのでかい耳の生き物!」

…そうだった。あたしはあの子を助けようとして、今こんな状態になってるんだったんだ。
ふーん、そっか。ラピって言うんだ、あの生き物。

あたしは、再びあたりを見回してみたけど。いない、どこにも見当たらない。

…おかしいな。あたしのすぐ後を追ってきたこの人が、こんな近くにいるんだから、いないはずはないと思うんだけど…もしかして、あたしが気を失ってる間に、どこかへ行っちゃったんじゃないんだろうか。

「知らない。気がついた時にはいなかったもん。ってか、ここはどこなわけ?」

そう切り返すと、男の子の目が、一瞬はっとしたように見開かれた。あたしがそうしたように、彼もあたりを見回した。

「ここ…もしかして、ノイルの森か…?…ってことは…」

みるみる喜色を浮かべると、男の子はいきなりあたしの肩を、両手で力いっぱい掴んできた。

「帰ってきたんだ!!元の世界へ!!俺のいた国レスタシアへ!!よかったーー!!そっか、あの池が『ゲート』になってたのか!!」

は?『れすたしあ』…?『ゲート』…?

「こうしてる場合じゃねぇ!早くラピを捕まえなきゃ!」

一人で勝手に納得してうなづいて、彼はそそくさと踵を返して走り去ろうとする。あたしは思わず彼に飛びついて、タックルをかけた。不意にバランスを崩され、二人もんどりうって地面に倒れ込んだ。

更新日:2008-12-03 18:37:39

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