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第二章

不思議な声に導かれるようにして、あたしは谷底の道を進んだ。

ごつごつした岩だらけの谷底の道は、細く急な流れの川に沿って続いている。
水の流れる音を聞きながら、あたしは無言でいくつもの分岐点を迷わずに進んでいった。

と、やがて水音が次第に大きくなり、崖の合間から大きな滝が見えてきた。
そしてその下に‥小さな神殿のようなものが見えてきたんだ。ボロボロで、今にも壊れてしまいそうな、くすんだ色あいの壁が、遠目からでもよく見える。

わかる。あそこで何かが待っているんだ。
あたしの足はひとりでに動きを速めた。

不思議な模様の浮かぶ、その神殿の門の前に立つと、予感は確信に変わった。

「なんだろう…ここ…知ってる気がする…」

あたしの声と、低い声が同時に同じ言葉を重ねた。
後ろを振り返ると、ヴァンが立ち止まったまま凍りついていた。 どうやらあたしたち二人、同時に同じ言葉をハモったみたいだ。

「え!?」
「え!?」

またしてもヴァンとハモってしまった。
怪訝そうな顔を見合わせるあたしとヴァン。

まさかヴァンもここを知っているの?
‥もしかして、なくしたヴァンの記憶と関係あるんだろうか?

どういうことなんだろう。こんなところ 見たこともないし、夢にだって出てきたことないのに。

なのに不思議と懐かしい感情がこみ上げてくる。
泣きたくなる様な切ない感情も。

フローラが心配そうに声をかけた。

「どういうことなのでしょう?」

‥といわれてもねえ…
当の本人達にも何がなんだかサッパリなんだから。

「と、とにかく!中に入ってみるしかないでしょ。きっと‥いや、必ず何か分かるはずだよ!‥行ってみよう!」

何かが起こりそうな予感に、不安と緊張で震えそうな心を勇気づけるようにあたしはそういって、大きな神殿のドアを開けようとした。

が、その手が一瞬止まった。
手を触れた所に描かれていた、ドアの模様に見覚えがあったから。
でも、何処で見たんだか思い出せない。

更新日:2008-12-13 21:14:35

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