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11章
さっきまであんなに晴れていたのに、急に真っ黒な雲が空一面を覆って、雨が降り出した。
雨はすぐに勢いを増して、ひどい悪天候となり、あたしにはそれが、まるでこれからの出来事を暗示しているかのように思えて、心の中に不安が募り、この空のように暗く、重たくなってしまっていった。
雨で湿って重みを増した翼を、ちょっと苦しげに広げながら、あたしたちを乗せた4匹のグリフォンは、聖女の神殿を目指してまっすぐに飛んでいた。
「お願い、もう少しだから、がんばって!」
今引き返すわけにも行かない。あたしはグリフォンにそうお願いするしか出来なかった。
「大丈夫?未散。顔色が悪いわよ?」
フォンが、弱りきっているあたしの体を気遣って、声をかけてくれた。
「ん、へーき、ありがと、フォン。」
そういったものの、この空気の薄い上空で、呼吸するのだって楽じゃない。おまけにこの悪天候。
本当は、今すぐにでも横になりたいくらい辛かったけど、そんな事言ってられない。早く流星の無事を確認しないと!
「…ヴァンと、何かあったの?」
いきなりフォンが尋ねてきたので、あたしはちょっと不意をつかれて、上擦ったような声を出してしまった。
「……え?なんで…?」
「なんだかふたりの雰囲気が、昨日までと違うように感じたから。ふふ、女のカンってヤツかしらね?」
女のカン……これにはどう突っ込んだらいいのやら……そう思いながら、あえてそのことには触れず、あたしは素直に夕べのことを話した。
「……昨夜ヴァンにね、好きって言ったんだ」
「まぁ!で?ヴァンは何て答えたの?」
「同じ気持ちだって言ってくれたの……とても……とっても嬉しかった・・・」
フォンがいかにも嬉しげに微笑んだ。
「あら!そうなのね!よかったじゃない、未散!」
「あ、ありがと」嬉しさと照れで、顔を赤らめながら、あたしははにかんで答えた。
フォンって、ホントまるで本当のお姉さんみたいで、なんでも話せちゃうから不思議だよね。あたしが一人っ子で、兄妹がいないから、余計にそう思えるのかも知れない。
…思い切ってフォンにだけは相談してみようか、アルザスがヴァンを狙っていることを。フォンなら最善の道を、一緒に考えてくれるかもしれない。
「ねぇ、フォン…。」
話し出そうとしたとき、そのフォンが、独り言のように小さくつぶやいた。
「これも………運命って言うもの…なのかしらね……」
「え?運命?」
「…………千年前…ヴァンとルクレシアは…恋人同士だったの。それはもう、お互いを凄く大事に思っていて…心から愛し合っていたわ。だから、そのルクレシアの生まれ変わりのあなたが、ヴァンと恋に落ちるなんて、凄く運命的だなって思ったの」
「そう…なんだ……」
ドクンと心臓が波打った。フォンが気まずそうに慌てて言い繕った。
「あっ、でもそれは過去の出来事だし・・・ね?…今は今よ。千年前は、ルクレシアの死、という形で二人の恋は終わってしまったけれど、今度こそ…今度こそは…あなたたちに幸せになってほしいわ。わたしも精一杯応援するから!この先どんなことがあっても、くじけちゃダメよ、未散。あたしはいつでもあなたの味方なんですからね!」
「うん…ありがとう、フォン……」
…なんだろう?この違和感は?自分でもよく分からない、正体のつかめぬ不安が、あたしの心をさらに重たくした。
「あ、ほら見えてきたわよ!ルクレシアの住んでいた聖女の神殿が!」
フォンの声であたしは我に返った。4匹のグリフォンはゆっくりと下降し、神殿の前に降り立った。
「この最悪の天気の中、本当にサンキュな。」ヴァンがグリフォンの頭を優しく撫でた。
「みんな、本当にありがとね、さぁ村へお帰り!…ヴェドル!!」
ネスティアの長に言われたとおりに呪文を唱えると、グリフォンたちは飛び立ち、瞬く間に空のかなたに姿を消した。
「それじゃぁ、いこっか!」あたしは先頭を切って、駆け込み、神殿の扉を開けた。
「懐かしいわね、ここ」フォンがまぶしそうに辺りを見回した。
そっか、みんなもルクレシアとここで一緒に過ごしたことがあったんだよね。ひときわ、ウィンの顔が厳しくなっているように思えたのは、あたしの気にし過ぎなんだろうか?
雨はすぐに勢いを増して、ひどい悪天候となり、あたしにはそれが、まるでこれからの出来事を暗示しているかのように思えて、心の中に不安が募り、この空のように暗く、重たくなってしまっていった。
雨で湿って重みを増した翼を、ちょっと苦しげに広げながら、あたしたちを乗せた4匹のグリフォンは、聖女の神殿を目指してまっすぐに飛んでいた。
「お願い、もう少しだから、がんばって!」
今引き返すわけにも行かない。あたしはグリフォンにそうお願いするしか出来なかった。
「大丈夫?未散。顔色が悪いわよ?」
フォンが、弱りきっているあたしの体を気遣って、声をかけてくれた。
「ん、へーき、ありがと、フォン。」
そういったものの、この空気の薄い上空で、呼吸するのだって楽じゃない。おまけにこの悪天候。
本当は、今すぐにでも横になりたいくらい辛かったけど、そんな事言ってられない。早く流星の無事を確認しないと!
「…ヴァンと、何かあったの?」
いきなりフォンが尋ねてきたので、あたしはちょっと不意をつかれて、上擦ったような声を出してしまった。
「……え?なんで…?」
「なんだかふたりの雰囲気が、昨日までと違うように感じたから。ふふ、女のカンってヤツかしらね?」
女のカン……これにはどう突っ込んだらいいのやら……そう思いながら、あえてそのことには触れず、あたしは素直に夕べのことを話した。
「……昨夜ヴァンにね、好きって言ったんだ」
「まぁ!で?ヴァンは何て答えたの?」
「同じ気持ちだって言ってくれたの……とても……とっても嬉しかった・・・」
フォンがいかにも嬉しげに微笑んだ。
「あら!そうなのね!よかったじゃない、未散!」
「あ、ありがと」嬉しさと照れで、顔を赤らめながら、あたしははにかんで答えた。
フォンって、ホントまるで本当のお姉さんみたいで、なんでも話せちゃうから不思議だよね。あたしが一人っ子で、兄妹がいないから、余計にそう思えるのかも知れない。
…思い切ってフォンにだけは相談してみようか、アルザスがヴァンを狙っていることを。フォンなら最善の道を、一緒に考えてくれるかもしれない。
「ねぇ、フォン…。」
話し出そうとしたとき、そのフォンが、独り言のように小さくつぶやいた。
「これも………運命って言うもの…なのかしらね……」
「え?運命?」
「…………千年前…ヴァンとルクレシアは…恋人同士だったの。それはもう、お互いを凄く大事に思っていて…心から愛し合っていたわ。だから、そのルクレシアの生まれ変わりのあなたが、ヴァンと恋に落ちるなんて、凄く運命的だなって思ったの」
「そう…なんだ……」
ドクンと心臓が波打った。フォンが気まずそうに慌てて言い繕った。
「あっ、でもそれは過去の出来事だし・・・ね?…今は今よ。千年前は、ルクレシアの死、という形で二人の恋は終わってしまったけれど、今度こそ…今度こそは…あなたたちに幸せになってほしいわ。わたしも精一杯応援するから!この先どんなことがあっても、くじけちゃダメよ、未散。あたしはいつでもあなたの味方なんですからね!」
「うん…ありがとう、フォン……」
…なんだろう?この違和感は?自分でもよく分からない、正体のつかめぬ不安が、あたしの心をさらに重たくした。
「あ、ほら見えてきたわよ!ルクレシアの住んでいた聖女の神殿が!」
フォンの声であたしは我に返った。4匹のグリフォンはゆっくりと下降し、神殿の前に降り立った。
「この最悪の天気の中、本当にサンキュな。」ヴァンがグリフォンの頭を優しく撫でた。
「みんな、本当にありがとね、さぁ村へお帰り!…ヴェドル!!」
ネスティアの長に言われたとおりに呪文を唱えると、グリフォンたちは飛び立ち、瞬く間に空のかなたに姿を消した。
「それじゃぁ、いこっか!」あたしは先頭を切って、駆け込み、神殿の扉を開けた。
「懐かしいわね、ここ」フォンがまぶしそうに辺りを見回した。
そっか、みんなもルクレシアとここで一緒に過ごしたことがあったんだよね。ひときわ、ウィンの顔が厳しくなっているように思えたのは、あたしの気にし過ぎなんだろうか?
更新日:2009-04-16 13:09:41