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第5話『過ちの後の秘密の恋』

・:・:・:登:場:人:物:・:・:・:・
松尾リク(主人公)
筒井君(筒井道隆さん風)
窪塚君(窪塚洋介さん風)
ユースケ君(ユースケサンタマリアさん風)
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 取り返しのつかない私の過ち。


 その大きな事件を私たち二人は乗り越えた、かのように見えました。
お互いへの愛は変わらず、というよりもむしろ、
このショックの大きさで、
いかに愛しているのかを改めて思い知ったという感じだった。
私も、筒井君も。


 でも、この事件が二人に与えた影響はやはり根深かったのでした。



 筒井君は高校時代から元々かなりモテる人でした。
”この女は”と心に決めた女にはとことん真っ直ぐな愛を向ける人でしたが、
基本的に、


「男は女の手のひらで遊ぶもの、
あちこち浮気はする生き物だけれど愛する女がいればこそ。
戻る場所は愛する女ただ一人。
浮気は浮気、愛する女は愛する女、まったく別のもの。」

 なんて考えの持ち主でした。

 そうは言ってもそれまではただ言ってるだけで、
実際には何もなかったのですが、
私の事件の後から変わり始めました。



 物わかりの良い大人の女ぶっていた10代の私は、
彼のその考え方に賛同し納得していた。

 何より彼にとことん愛されていることに、
どこまでも自信があったので、


「浮気なら別にしていいよ。私が別格の女であることが変わりないなら。
但し、私の手の平で遊んでいる証拠として、絶対に隠し事をしないこと。
浮気はすべて私に報告すること。知っている事ならすべて許すから。」

 という条件をだし、すべてを許していた。

 浮気なんてコソコソやるから興奮し、盛り上がるのであって、
普通は報告なんてしたくないだろうに、
筒井君は私との約束を守り、ちゃんと何でも話してくれた。
だから何を聞いても安心していられた。
変と言えばとても変な関係かも知れないけれど。




 この十年ほど後に聞いた話しだが、
筒井君は私の過ちを知ったあの日から、
ノイローゼ気味だったそうだ。

 絶対的に信じきっていた私の過ちを聞かされた事で、
すべての人間を信じられなくなり完全な人間不信に陥って、
「女って一体なんなんだ?」
と、私以外の女のことは人間だとは思えなくなっていたそうだ。
ケダモノのようにしか思えなくなっていた、
私のあの過ちせいで、彼の心にはそんな時期が続いたのだそうだ。




 そんな彼の心の不安定。
そしてまた彼の浮気の数々に大人ぶって平静を装いながらも
心の奥底では無傷でいられなかった私もやはり不安定。

 その上、私は酷い事をしてしまったのだという強烈な負い目に苛まれ…
それらがギスギスと音を立ててきしみ合い、
いつしか私たちはお互いを愛すれば愛するほど、
哀しいくらいに衝突するようになっていた。
逢う度になぜか些細な事から喧嘩してしまう。
 


 大好きなのになんでこうなっちゃうんだろう。


更新日:2009-03-07 17:04:45

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バツ2女の恋愛日記カミングアウト25年 〜愛ってなに?〜