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ガジュマルさん

 人は三歳で性欲を覚えるらしい。ある日、クラスメイトのハヤシはそんなことをいった。アダルト本のコラムに書いてあったという。得に医学的な説明も書いてなかったんだけど、AV評論家のガジュマルさんがコメントしてたんだよ。本当かどうか分からないけど、事実だったら少し興味が湧くっていうか、少し笑えるよな?ハヤシはそういったあとで僕が適当に頷くだけで関心を示さないでいると、全く関係のない話を始める。知ってるか、イイヤマってワカイと別れたらしいぜ。僕はまた適当に相槌を打つ。
 ハヤシがいう三歳で性欲を覚えるっていうのは僕自身に当てはめてみても該当はしないし、そもそもその頃の記憶さえただ一つしかない。おばあちゃんが末期の癌で入院している病院の待合室で飲んだ豆乳だ。通路に置かれた焦げ茶色のベンチに母親と並んで坐っているときにすぐ横にいた若い男が、僕が物欲しそうに見つめているのを感じて自販機から買ったばかりの二つの豆乳の内の一つを僕にくれたのだ。礼をいう母親、さっそくストローをおぼつかない手付きで挿そうとする僕。あとになって知ったのはその若い男はエイズ患者だった、とのことだ。母親が若い男本人から聞いたそうだ。その人が今、どうしているのかたまに気になることもあった。豆乳のパッケージを見たときや実際に口にしたときに病院での情景が頭に浮かぶ。けれどそこに何度も会っているはずのおばあちゃんが一度も現れたことがない。おばあちゃんは僕が三歳のときに亡くなったから、どうしても写真の中でしかその姿を確認することが出来ない。
 さて七歳の頃の記憶だけど、僕は自分で自分は変態の部類に当てはまる気性の持ち主だと自覚していた。当時、僕は月間の少年漫画誌を毎月購入していた。それは漫画が面白かったというのもあるけれど、それ以上に購買意欲を掻き立てるものがあったからだ。漫画に登場する様々な美少女キャラ。僕は彼女らを見つける。そうして彼女らの股間を舌先で舐めるのだ。僕は幼いながらも性的な興奮を帯びる。だけど、その先に性的な快感は存在しない。ただそうしていることで無意識に快楽を味わっていたのだ。射精的な快楽の方法を知るのはそのずっとあとのことなのだけれど。それでも当時の僕は得体の知れないその気持ちよさというか、開放的になるその一瞬を楽しんでいた。
 その頃、僕は亡くなったおじいさんの妹の孫と、これはハトコと言えばいいのだろう。彼女は父子家庭でキヨミには兄弟はなかった。僕はキヨミが好きだったし、家には二人しかいないことからか僕は毎週のように泊まりに行っていた。もちろん彼女との間には、僕の年齢もあって性的な関係になることはなかったし、そんなことも考えることはなかった。ただ僕はキヨミの肌のすぐ側に存在できることに一種の優越感があったのだ。
 いや、こんなことどうでもいいのだ。

更新日:2023-06-20 08:47:57

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君との出会いは僕における全世界創造記念日、及び大恋愛革命!