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そして僕らは

スェロ・マリノの一件から5日。

ソウル・リベレーターズは再びヴァカンシーの礼拝堂を訪れていた。

まずは鉱石を台座へ戻すと、バーディは、簡易的ではあるが、金具で固定する。

「これで簡単には持ち出しはできない筈。音に影響出なきゃいいんだけどね…それだけが心配」

そう言って、ドライバーのハンドルで鉱石を叩く。思いの外鋭い響きに、グレンが耳を押さえた。

とはいえ、移動中に既に試し打ちはしている。初めて鳴らした時は、ジャックが思わず装甲車を停めた程だった。居住区を外れた自動運転中だったにも関わらず…むしろ、騒音公害にならずに済んで安堵した。バーディは1度で慣れ、その後ライズとジャックもそれなりに耳馴染んだが、グレンだけは未だに苦手にしている。

「毎晩この音鳴らしてたんだよな…すげぇな、ここの人たち」

まだ眉を顰めながら、グレンが呟く。が、ジャックは手を振る。

「違う違う。ちゃんとした鳴らし方があるんだよ」
「え!?そういう…?」
「うん。カーターの論文に書いてあった」
「…読んだのか」
「まぁね。読まなきゃ、概要もわからないから」

ジャックは肩を竦める。バーディが得意げに、ヤジロベエのような器具を差し出した。

「これも、ジャックが設計してくれたんだぜ。ま、実際動くように組み立てたのは俺だけどな」
「で、そいつを調整しないとなんだろ?」

比較的損傷の少ない椅子を抱え、ライズは呆れたように零す。バーディも慌てて椅子運びに移る…器具を載せる台を、今から作るのだ。手を貸しかけ、グレンはジャックを見た。

「あ…もしかして、迎撃の準備しといた方がいいか?」
「ん〜、そうだねぇ。ちゃんと機能するか、そこまで確認しないといけないし…1発で上手くいくとは限らないしね」
「じゃあ、俺たちはそっちの用意を………鳴らす時は言ってくれ、逃げるから」

グレンは渋い顔をして、装甲車へ向かう。苦笑しながら、ジャックもその後を追った。

更新日:2023-06-24 19:52:06

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