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【彼ら】という存在

その夜は散発的に小群が侵入し…全て無事処理したものの、少々気疲れする結果となった。

「最終日にこうなるとは…」
『偶然って怖いな』

朝日を眺めながらの会話。だが、放置していたら700体程の群れになった可能性が否めない…ある種の達成感も抱かずにはいられなかった。

早々に礼拝堂前に装甲車を付け、荷物を積み込む。1時間少々で撤収準備を済ませると、何故だか妙に感傷的になる。互いに顔を見合わせ…グレンは頷いた。

「よし、行くか」

ここが終点ではない。装甲車に乗り込み、出発する…再び、生者の世界へ。

「で、どうしようか?何処へ向かえばいい?」

ひとまず自動運転に切り替えたジャックが問う。総員、グレンを見つめるが…グレンは暫し考え込んでから、口を開いた。

「俺なりに、考えたんだが。その…これ以上、お前らに付いて来て欲しいとは言えないな…と…」

やや沈黙の後、ライズが尋ねた。

「それってさ、俺たちに選択権はないワケ?その、話を聞いた後で」
「まぁ…それは拒否できない…が」
「だったら聞かせてよ。俺たちにもそれなりに考えはある」
「俺も…リーダーの足引っ張るなら手を引くけど、結論くらい聞きてーよ」

それぞれの答えを聞き、グレンは少し困ったような表情を浮かべ、告げた。

「あのな…俺、礼拝堂にあったモノを、取り返したい…と思ってる。エレナがそれを望んだのかはわからないけど…他に、何ができるか、思いつかなくてさ」
「…取り返しても、鳴らす人間はもういないワケだけどね?」

ジャックの冷淡な返しに、グレンは視線を彷徨わせる。

「まぁ…そうなんだが…」
「それを承知の上で、トリ・ライブラに喧嘩を売るからには、俺たちを巻き込みたくないと?そういうこと?」
「う…まぁ…」
「ところで、俺抜きで作戦とか立てられるっけ?リーダーは」

更新日:2023-06-17 18:19:25

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