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日暮れ間近、それぞれ持ち場に移る。

「あれ?じゃあ、明日の朝には撤収ってコト?」
「あぁ…そうなるよね。じゃあ、各々そのつもりで」
「ラジャー」
『了解』

グレンの返事に、ジャックは少し驚く。

「あれ…リーダー、無線繋いでたんだ?」
『え?あぁ、ちょうどさっきな』
「ナイス・タイミング」
『いや、そろそろだと思ってさ』

グレンの調子は変わりない…ジャックとバーディはライズを窺うが、ライズも首を傾げるばかり…平静なのか、その振りなのか、判断がつかない。

礼拝堂に着くと、ライズは早々に3階へ上がる。背面の窓から見下ろすと、何かが破壊された跡がある…そこにあったのは、納屋だったか。グレンは石畳に胡座をかいて座っていた。

「落ち着いたのか?」

ヘッドセット越しに、呼び掛ける。グレンはこちらを見上げ、手を挙げた。

『お陰様で』
「まぁ、見なかったことにしとくけど」
『すまんな』
「いや…せめて俺にくらい見せろ、そういうの」
『それも含めてさ』

ジャックもバーディも、聞いているのだろうが、何も言わなかった。

夕べを過ぎて、背面から50体程度の群れ、ほぼ1時間後に右方から100体超の群れが来襲する…何もグレンとライズがそれぞれ単独で処理する。

『これ…多少は法則性があるのかね』

何気ない風に、グレンが尋ねる。今夜もバーディの背後からモニタを眺めていたジャックが答えた。

「あると言えばあるかな。右方と背面が攻められ易い…その程度だけどね。アンデッドの移動経路が、そういう流れなんだろう」
『そういう感じか〜』
『…これ、思ったんだけど、俺らが止めなかったら合流してるって事だよな?大した数じゃないけど』

ライズが割り込んだ。ジャックはバーディと視線を交わし、咳払いする。

「そういうこと、気づくなよ〜…やりづらい」
『あ、悪い』
「いや…群れが合流するのって、こういうポイントがあるからだって…俺が気づいちゃっただけだけどさぁ」
『じゃあ、後々の役には立ってるワケか…偶然だけど』

如何にも暢気にグレンは呟く。バーディは吹き出した…安堵の故だ。どうやらグレンは、それなりに気持ちを立て直しているようだと、実感して。ジャックは一瞬眉を顰めたが、すぐに苦笑する。

「確かに、その分の報酬は受け取ったようなモンだしねぇ」
『それもそうだ』

今ならわかる…エレナからの報酬は、恐らくはこの街の蓄財だ。本当なら、街を守る為に使われる筈だった金銭。彼女がどんな想いでそれを支払ったのか、もうわからないけれど。

(せめて、報われればいいけどな…)

口にはしなくても、等しく、そう願っていた。

更新日:2023-06-10 19:28:48

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