- 30 / 86 ページ
決意と疑惑
「まったく…バーディまで付いてたってのに、何でこういうことになるかなぁ…」
装甲車を走らせながら、ジャックは心底呆れ返った声を上げた。バーディはライズを睨みながら零す。
「いや、だってさぁ…」
「わかってる、バーディは悪くない」
ジャックは宥めるように手を振った。そのやりとりにライズは乾いた笑い声を立て、グレンは項垂れた。
遡ること2時間、スェロ・マリノの支部で…
ライズとグレンを残したまま、バーディは状況説明の為に装甲車へ戻った。事情を聞いたジャックは額を押さえる。
「ど…どーしよ?」
「どうするも何も…まぁ、ここに連れて来たら?」
そう答えながら、モニタに目を走らせる。
「…何かあった?」
「いや、別に。もしかしたら、施設では聞かない方がいい話なのかもなって思っただけ」
「そうなのか…?あ、でも、手続きどうするかって、リーダーが」
「あぁ…そうだな。取り敢えず、その…エレナさん?ライズに連れて来させて。リーダーは報酬引き出してから戻ってって…それくらいは幾ら何でもできるでしょ。依頼は…まぁ日を改めて、かな」
「俺は?」
「ん〜…どうしたい?」
バーディは気まずげに目を逸らす。肩を竦め、ジャックは応えた。
「わかった。バーディはリーダーに付き添ってて」
「…あの2人がここまで目を離せないとは思わなかった」
「俺もだよ。流石に」
バーディは伝達の為に支部へ戻り、ジャックはモニターに立ち上げていた文書を閉じる…どう考えても、いい予感はしなかった。
まずはライズがエレナを連れて来る。時も頃合い…グレンたちも直に戻るだろう。
エレナを車内のソファに掛けさせ、ジャックはコーヒーを出す。落ち着かない様子のエレナに、ジャックは尋ねた。
「あっ…お茶の方が良かった?ごめんね、ウチ男所帯だから気が利かなくて…」
「いえ、あのっ…そういうんじゃなくて…ありがとうございます。私…お話を聞いてもらえるだけで、本当に…ありがたくて…」
支部内で騒ぎを起こしていた、という前情報からは掛け離れた、淑やかな様子に、ジャックは…ライズも少し、驚く。だが、それ以上に、ジャックはエレナの言葉に引っ掛かりを感じた…とはいえ…
「悪いけど、ちょっと待ってね。一応リーダーがいるところで話は聞きたいから」
「はい、それは勿論です」
「一応って…」
「あんたが言うかよ」
ジャックはライズを睨む…確かに、グレンの意向を確認せずにエレナに声を掛けた当人が何を言うべき筋合いもなく、ライズも沈黙する。やらかした自覚はあるらしい。ジャックはエレナの向かいに腰掛けた。
「でも、幾つか聞いておきたいことはあるんだ。まずは…あなたは元々、依頼をしにここへ来たんだよね?」
「はい。ロロ・ティエラから…」
「えっ!?ロロ・ティエラって、結構遠いじゃないか」
思わず口を挟んだライズに眉を寄せつつ、けれど確かにそれも気になり、ジャックはエレナに答えを促す。
「はい、でも、ここが一番近い支部なんで…あと、伯母がこの街にいるんです」
「なるほどね…でも、ロロ・ティエラってデッドライン…あー、その…アンデッドの侵攻地域からは、まだ大分離れてるよね?どうして…」
「はい。街のことじゃないんです。その…」
エレナは真っ直ぐにジャックを見つめた。
「兄を、探しているんです」
装甲車を走らせながら、ジャックは心底呆れ返った声を上げた。バーディはライズを睨みながら零す。
「いや、だってさぁ…」
「わかってる、バーディは悪くない」
ジャックは宥めるように手を振った。そのやりとりにライズは乾いた笑い声を立て、グレンは項垂れた。
遡ること2時間、スェロ・マリノの支部で…
ライズとグレンを残したまま、バーディは状況説明の為に装甲車へ戻った。事情を聞いたジャックは額を押さえる。
「ど…どーしよ?」
「どうするも何も…まぁ、ここに連れて来たら?」
そう答えながら、モニタに目を走らせる。
「…何かあった?」
「いや、別に。もしかしたら、施設では聞かない方がいい話なのかもなって思っただけ」
「そうなのか…?あ、でも、手続きどうするかって、リーダーが」
「あぁ…そうだな。取り敢えず、その…エレナさん?ライズに連れて来させて。リーダーは報酬引き出してから戻ってって…それくらいは幾ら何でもできるでしょ。依頼は…まぁ日を改めて、かな」
「俺は?」
「ん〜…どうしたい?」
バーディは気まずげに目を逸らす。肩を竦め、ジャックは応えた。
「わかった。バーディはリーダーに付き添ってて」
「…あの2人がここまで目を離せないとは思わなかった」
「俺もだよ。流石に」
バーディは伝達の為に支部へ戻り、ジャックはモニターに立ち上げていた文書を閉じる…どう考えても、いい予感はしなかった。
まずはライズがエレナを連れて来る。時も頃合い…グレンたちも直に戻るだろう。
エレナを車内のソファに掛けさせ、ジャックはコーヒーを出す。落ち着かない様子のエレナに、ジャックは尋ねた。
「あっ…お茶の方が良かった?ごめんね、ウチ男所帯だから気が利かなくて…」
「いえ、あのっ…そういうんじゃなくて…ありがとうございます。私…お話を聞いてもらえるだけで、本当に…ありがたくて…」
支部内で騒ぎを起こしていた、という前情報からは掛け離れた、淑やかな様子に、ジャックは…ライズも少し、驚く。だが、それ以上に、ジャックはエレナの言葉に引っ掛かりを感じた…とはいえ…
「悪いけど、ちょっと待ってね。一応リーダーがいるところで話は聞きたいから」
「はい、それは勿論です」
「一応って…」
「あんたが言うかよ」
ジャックはライズを睨む…確かに、グレンの意向を確認せずにエレナに声を掛けた当人が何を言うべき筋合いもなく、ライズも沈黙する。やらかした自覚はあるらしい。ジャックはエレナの向かいに腰掛けた。
「でも、幾つか聞いておきたいことはあるんだ。まずは…あなたは元々、依頼をしにここへ来たんだよね?」
「はい。ロロ・ティエラから…」
「えっ!?ロロ・ティエラって、結構遠いじゃないか」
思わず口を挟んだライズに眉を寄せつつ、けれど確かにそれも気になり、ジャックはエレナに答えを促す。
「はい、でも、ここが一番近い支部なんで…あと、伯母がこの街にいるんです」
「なるほどね…でも、ロロ・ティエラってデッドライン…あー、その…アンデッドの侵攻地域からは、まだ大分離れてるよね?どうして…」
「はい。街のことじゃないんです。その…」
エレナは真っ直ぐにジャックを見つめた。
「兄を、探しているんです」
更新日:2023-06-03 18:23:22