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『オタクの刑』

 真っ白な部屋の中に、ポツンと木製の座椅子が置かれている。そしてその椅子に処刑者の男性が目隠しをされた状態で座らせられる。男性の両手首、両足首には拘束具がつけられ、身動きが取れない状態にされている。
 屋外の音は全く聞こえてこない、まさに無音の部屋である。
 数時間が経過した──。
 ただでさえ、そんな無音の部屋に長時間ひとりでいたら気が狂う。にも拘わらずそれだけでは終わらなかった……。

 処刑者の男が椅子に座らせられ数分の時が流れた。
 静かに扉が開く音が処刑者の耳にこだまする。
 開かれた扉の前には眼鏡をかけた小柄な男が無言で立っている。
 後ろ手で勢いよくドアを閉める。
 そしてその眼鏡をかけた男は右足から一歩ずつ処刑者に向かい歩いていく。その足音が静かな室内に大きな音を立てて響く。処刑者は目隠しをされ何も見えない恐怖心からか、歯をカタカタとさせ全身が小刻みに震えている。見えない恐怖が足音とともに近づいてくる。
 また一歩。
 そしてまた一歩と……。
 恐怖の足音がやってくる。
 処刑者の前でその恐怖の足音が止まる。
 処刑者は小便を漏らしている。
 迫りくる恐怖。
 それは処刑者にしかわからない。
 眼鏡の男は処刑者の前で立ち止まり、両手でゆっくりと処刑者のアイマスクを外していく。
 アイマスクを外された処刑者は、眉間に皺をよせて強く目をつむっている。真っ暗な世界から解放されたが、ずっとアイマスクをしていたため、すぐには両目をあけられずにいた。
 処刑者はゆっくりと瞼を開いていく。
 そして徐々に視界が開けると、目の前には眼鏡をかけた無表情でへの字口の小柄な男がたっていた。
 処刑者は顔を上げると、眼鏡の男と目線があう。
 眼鏡の男は処刑者に向かい一方的に自分語りを始めた。
 それは1時間以上の時間が経過した。
 それだけではない、自分の趣味の話などを永遠と処刑者に向かい話し続ける。
 処刑者は発狂しかける。
「うぉー。もうやめてくれ頼む!」
 処刑者は怒鳴り声をあげた。
 それでも抑揚のない話し方が止むことはなっかた。
 かれこれ2時間は経過していた。
 そしてしばらくすると眼鏡の男は満足したのか体を反転させて扉の方へ向かい歩いていく──
 
 ── 眼鏡の男が部屋を後にし、しばらくすると、またひとり部屋に入ってくる。その男は上半身を左右に揺らしながら、少し蟹股で小走りに処刑者に詰めよる。そして処刑者の顔を覗き込むように顔を近づける。そして処刑者に向かい、
「鵜島次郎、鵜島次郎、鵜島次郎……」
 と、永遠に自分の名前を一方的に連呼する。
 それはゆうに2時間にも及んだ。
「うぉわぁー! もう勘弁してくれぇー」 
 処刑者は発狂気味に大声で怒鳴る。
 拘束された両手首と両足首をバタバタと揺らし、はちきれんばかり体全体を動かしながら顔を上下左右に激しく揺らしているその姿はすでに廃人のようだった……。
 鵜島次郎と名乗る男が部屋を後にすると、処刑者の男は首をだらりと垂らしてうなだれている。息遣いが荒い。すでに虫の息といった様子である。
 そしてさらに追い打ちをかけるかの如く、男女合わせて5人のオタクたちが室内に入ってくる。そして処刑者を囲むようにして、一斉に一方的に同じこと繰り返し話しかける。
 両手を広げオーバーリアクションで話しかける者や耳元で抑揚のないしゃべり方で囁きかけている者……。
 それが永遠と続いた……。
 ゆうに3時間は過ぎたであろう。
 処刑者はそのオタクたちのすざまじい口激に、ついに音をあげ、白目を剥き口からは大量の泡を吹き気絶する ──


 ── いかかでしたでしょうか?アタオカ都市伝説『オタクの刑』

 こんな世にもおぞましい刑が都市伝説としてあるという 。

 言いたい放題やりたい放題を繰り返していると、次はアナタの番かもしれません。
 お気をつけて……。

更新日:2023-05-19 08:45:49

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アタオカ都市伝説シリーズ『オタクの刑』