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 --其れから数日が経つ。竜骨の上に築かれる集落は新しい長ヒルカの指導の下で着実に復興が進む。彼等の髪飾りは其の侭だが既に階級制度は撤廃。誰もが平等な集落社会が始まる。

 何故ヒルカは罰を受けないのか? いや、受ける筈だった。だが、此の時代に於ける逞しい男の肉体は雄達の気持ちを昂らせて雌達を大いに興奮させる傾向はそう簡単に払拭される物ではない。そんな単純明快な事が奴隷達の目にヒルカこそ新しい長に相応しいと映ってしまった。現代人にはわかりそうもない言葉のない世界ならではの肉体言語が為せる奇跡だろう。

 そんな奇跡が在っても自由を求める者達は留まる事をしない。ロクーは愛しのメーテルーと共にヒルカ達に内緒で集落を後にしてゆく。何故か? 彼は生まれた時から孤独を愛し、居住区に定住を求めない自由な気質過ぎた。当然、奴隷処か生贄の身分から解放されたい彼女も其れに共感して後にする。だが、其れを匂いだけで気付いた動物が一匹……雌三匹を連れるように二人の後を追う。

 流石に気付いたヒルカ達集落の面々はロクーを捕らえるよう命じる。大勢の集落民が嘗ては平民から奴隷だったのを意識せずにロクーとメーテルーという共通の対象目指して煙を上げながら追い掛けてゆく!

 ロクーはゴウドンの頭を右拳骨で叩きながらも注意をする。だが、其れ以上の制裁をする暇はない。追っ手は目の前、為らばゴウドン達も道連れにして逃走劇を繰り広げるしかない!

 そう、太陽が落ちる時間だろうと月が満月へと至ろうと無月に戻ろうと、雨や雪や台風や火山や洪水が押し寄せようとも……ロクーは愛するメーテルーと厄介者のゴウドン達を連れて果てのない逃亡劇を続けるのでした。

 やがて、ロクーは追手が来ない日の日付が変わる時間帯にて誰の目も見えない場所にて遂に大人の階段を--

                              原始編 『FIN』

更新日:2023-05-24 20:09:02

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