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始動編

「エイジ、貴方には此の人が苦しんで来た全ての事を何もわかっていない。だから平気で人を傷付け、そして自分の正しい道以外全てを奪えるのよ!
 フフフ……全てを、わ、私は私は、そ、そうだ。マッシュの所に……行かないと、あ、貴方と一緒に、此の『メガロマニア』から抜け出さない、と、ね!」

 間に合わなかった……俺がもっと早く右足を踏み出せば彼女は自刃する事もなかった。親友だった男に被さるように大切な人が、死んだ--此の山の頂上に在る筈だった最後の希望は儚くも俺の目の前で散った!

「……『全生命体の敵』は、若しかすると倒すべき魔族の中に居なかったのかも知れない」

 『魔王像』の前で俺は……若しかしたら狂ってゆくのを感じ取れたのかも知れない。だが、其れを糺す者は此の世の何処にも居ない。全て此の瞬間に失ったのだからな。もう俺は、何も失わずに済む。

「為らば俺は……此の模倣された世界に従って魔王オディオの後継者に成ろう。こんな守るべき価値なんて見出せない人間全てに自分達がどれだけ他力本願で自分勝手な選択肢をして来たのかを魂の髄迄思い知らせてな!」

 其の時、忌々しい魔王像が俺の闇に応えて両の眼を輝かせたのがわかる。其れに合わせて俺の体内に宿す悪の因子が力を与えるのを感じる。其の力が此の世界に存在する魔という魔に生きとし生ける全てを喰らい尽くすよう命じるのがな!

「今から俺は『エイジ・クルセイダー』という己を捨てる……俺の名前は、俺の名前は--」

 其の名前を告げた瞬間、俺の背中に闇のマントを羽織るのを感じる。こうして此の世界は滅んだ……俺が齎した光を呑み込む闇の力で!

 終わり? いいや、此れは始まりに過ぎない。先ずは此の時代へと至る八つ全てに対して総攻撃を始める。

 ……一方で俺は信じたのかも知れん、俺が齎す闇を乗り越える事をな!

 始動編

 『模倣』

 原始編に続く……

更新日:2023-05-23 18:30:47

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