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竜の卵
ジュス=トリニータ神学院、秋学期最初の面談で…間もなく訪れる連休の過ごし方について、レインは担任教師と話し合っていた。
「君には…数件の希望を受けているが、どうするね」
レインの所属する司祭部の場合、休暇を研修に充てる事が勧められる。その受け入れについて、まだ1年生であるレインに対して申し出がある、という異例の事態に、レイン自身が戸惑いというよりも、ある種の諦念を抱えた。
「ありがたいお話…ではあると思いますが」
珍しく正直な感想に、担任教師は苦笑する。
「こちらも無碍には断れない立場でね…」
「それで…?」
「ティターニア侯爵夫人が特にご執心のようだが…まぁ、無理に、とは言わんよ」
レインの内心を察したらしい教師の言葉に、溜息を吐き、レインは頷く。
「僕も…無碍にはできない立場ですから」
その返答に、教師も溜息を吐く。
「いいのかい?」
「ティターニア侯爵領は、まだ神殿の体制が確立してませんからね」
…仮にも主教の養子という肩書上、断る訳にはいかない。そう…その肩書目当ての申し出だと、端からわかっていても…だ。
「まぁ、面倒なことにならないように…祈ってて下さい」
要するに…ティターニア侯爵夫人は、自分の娘とレインの婚約を目論んでいる訳だ。無論、レインにその気はない。恋愛の自由くらいは認めてもらわなければ、割に合わないだろう。
そして…連休初日。
レインはバスでティターニア侯爵領へと旅立った。
「君には…数件の希望を受けているが、どうするね」
レインの所属する司祭部の場合、休暇を研修に充てる事が勧められる。その受け入れについて、まだ1年生であるレインに対して申し出がある、という異例の事態に、レイン自身が戸惑いというよりも、ある種の諦念を抱えた。
「ありがたいお話…ではあると思いますが」
珍しく正直な感想に、担任教師は苦笑する。
「こちらも無碍には断れない立場でね…」
「それで…?」
「ティターニア侯爵夫人が特にご執心のようだが…まぁ、無理に、とは言わんよ」
レインの内心を察したらしい教師の言葉に、溜息を吐き、レインは頷く。
「僕も…無碍にはできない立場ですから」
その返答に、教師も溜息を吐く。
「いいのかい?」
「ティターニア侯爵領は、まだ神殿の体制が確立してませんからね」
…仮にも主教の養子という肩書上、断る訳にはいかない。そう…その肩書目当ての申し出だと、端からわかっていても…だ。
「まぁ、面倒なことにならないように…祈ってて下さい」
要するに…ティターニア侯爵夫人は、自分の娘とレインの婚約を目論んでいる訳だ。無論、レインにその気はない。恋愛の自由くらいは認めてもらわなければ、割に合わないだろう。
そして…連休初日。
レインはバスでティターニア侯爵領へと旅立った。
更新日:2023-04-29 22:09:28