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海賊船

突然の爆発音で海賊達は何が起きて居るのか把握出来ていなかった


「なんだなんだぁ敵襲か!!お前ら起きろおぉぉ」

「おい!!何処から撃たれてる!!?」

「上だ!!真上に気球が接近してる」

「弓を持ってこい!!弓!!」

「気球から2人マストに飛び移った!!寝てる場合じゃ無ぇぞ!起きろアホがぁ!!」


ぎゃぁ…

うぐぅ…

ぐえぇ…

船内から飛び出した海賊は一人づつ頭部に矢を受け絶命して行く…



甲板

「この船は貰う!!」…騎士は海賊を挑発した

「なんだとぉ!!この船は俺達が先に見つけたんだ!!俺達の物だ!!」

「お前ら一体何者…」

シュン!!グサ!!

「かしらぁ!!」

「命が惜しかったら海へ飛び込め…」囚人も合わせて挑発する

「なんだとおぉ!!」

シュン!!グサ!!

「がは…」エルフの娘が放つ矢は正確に頭部を撃ち抜く

「もう止めろ!!逆らうな!!」

「他の仲間がこの騒動に気づいて…」

シュン!!グサ!!

「ぐへぇ…」


一瞬で狩り取られる命を目の前に僕は背筋が凍った…

奪われているのはまさしく命…

僕達はそれを彼女にやらせてしまって居る


「もう良い!!!!早く逃げてくれぇぇ!!」

「た、た、たすけてくれぇ…」走り出し海へ飛び込もうとする海賊にも容赦なく矢が落ちる

シュン!!グサ!!

「げはぁぁ…」

「エ、エルフの娘!!もう良い!!もう撃たなくて良い!!」


声が届かなかったのか…

彼女の放つ矢が降り止む事は無かった…

そして海賊達は一人残らず命を狩られた…



気球にて

「エルフの娘や…もうお止め…」魔女は震えるエルフの娘の手を制した

「ハァハァ…」目には大粒の涙が流れている

「我を忘れてしまった様じゃな…囚われたエルフの心を感じたかの?」

「ううぅぅ…魔女様…わたし…何をしてしまったのだろう…」

「おいで…主は心優しい良い子じゃ…わらわの下へ来い」

「うぅぅぅ…」

「こりゃとんでもねぇな…一瞬で20人全部やっちまった…」盗賊は身震いした

「エルフの怒り…か…驚いた」商人も驚き固まって居た…



海賊船

フワフワ ドッスン

船尾の帆が畳まれて居て丁度気球を下ろす事が出来た

「船の中にもう海賊はいねぇか?」

「全員ヘッドショットで死亡したのを確認した…一人も残って無い」

「よし!騎士は気球を畳んでくれ!囚人は死体の処理を頼む!血を吸っても構わん!」

「他の海賊船にはまだ気付かれていないみたいだ」

「そりゃまだ日も登って無ぇしな…急襲が上手くハマった」

「早くこの海域から出よう…とりあえず幽霊船のポイントまで進める」

「だな?」

「僧侶と魔女とエルフの娘は掃除をお願い」

「は~い…その前にお祈りだけさせて~」

「そうじゃな…死者を弔わんといかんのぅ」

「……」エルフの娘はうつ向いている


僕はその姿を見て何て声を掛ければ良いか分からなかった…

こんなツライ事に巻き込んでしまって…ゴメン

君はやっぱり森で静かに暮らした方が良い

必ず森へ還してあげるから…


リーン…


「え!?」思わず彼女を振り返った…


まさか君は…

僕の声が聞こえるのか?


「船を進めるぞおぉ!!うらあああ!!」


バサバサバサ

帆が風を受けて大きく膨らんだ…



船長室

商人はガサガサと机やテーブルを物色していた

「おかしい!この船には航海日誌が無い…なんでだろう」

「あ~始まった~ブツブツターイム」

「海図も無い…これはもしかして!!」

「おい商人!!この船おかしいぜ?軍船のくせに武器が一つも載ってない」

「積荷は?」

「食料が少しだけだ」

「お酒は~?」

「それは安心しろ」

「ウフフ~」

「寝室は?」

「お~い大変だ~!!ハァハァ」

「どうした!?」

「寝室に勇者の証が置いてあった…」

「やっぱりそうか…これは勇者達が乗っていた船だ」

「なるほど…魔王城へ行く為だけの装備しか無いって事か」

「という事は勇者達はもう幽霊船に乗っている事になる…直接魔王城へ向かう進路に変えよう」

「分かった!囚人!!来てくれ!!海図に魔王城の場所を書いてくれ」

「ここだ…このまま南の方角だ」


---追いつけないと勇者達が危ない--

更新日:2023-03-20 08:11:46

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