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3.エルフの森

挿絵 180*240

気球1日目

ヒュゥゥゥ ギシギシ

気球の球皮から吊り下げられた籠の部分は風に揺られてギシギシ音が出る

4人乗りの籠で広くはない…でも足を延ばせるから意外と快適に飛べる


「地図によると下にある森は南北にずっと繋がってるらしい」

「ん~~~森しかみえな~い」

「この森に分断されて東の始まりの国と西側とが国境になってる」

「エルフは古来よりこの森を支配しとるが…人間に友好ではないぞ」

「国境付近ではいざこざが絶えないらしいね」

「エルフって見たことないな~~」

「耳が長くて容姿は端麗じゃ…人間は一方的にエルフに恋をするのじゃが…」

「寿命の差が大抵切ない結果になるでエルフは人間を遠ざけて居るのじゃ」

「へぇ~美人さんなんだ~」

「今日は暖かいから少し高度を上げよう…」


ビリビリ パラパラパラ…僧侶は何かの紙をちぎりばら撒いた


「僧侶?何してるんだい?」

「え?うん隊長の指令書をやぶって捨てたの…」

「??どうして?」

「うん…もういいの」

「まだ2つ指令が残ってたんじゃなかったっけ?」

「ほら…もう帰れないしさ~」

「良いのかい?」

「うん」にっこり笑った

「でも何が書いてあったのかは気になるな」

「教えてほしい~?」

「ちょっと知りたい」

「……」

「嫌なら良いよ…」

「あの指令にはね…勇者の事が書いてあったの」

「勇者?僕の事かな?」

「ううん」

「どういう事だろう?」

「選ばれた勇者と…本物の勇者の事」

「んん???」

「本物の勇者を探せっていうのが指令6」

「本物の勇者?…どういう事かな?」

「王国で選ばれた勇者の本当の目的は…本物の勇者を魔王の所に導く役目なんだって」

「やっぱりそうだったんだね…師匠も同じ事を言ってた」

「その本物の勇者がわらわの愛しの人に違いない」

「そうかもしれないね」

「あぁ…愛しきわらわの勇者よ…今助けにゆくぞ」

「それからね?」

「うん」

「選ばれた勇者が真実を知った時…指令7…暗殺」

「え?真実?」

「それは魔王の城に行ったとき分かるって…」

「でもね!わたし暗殺なんてできない…」

「暗殺…でもどうして暗殺なんか」

「わかんない…指令が完了したら帰還しろって書いてあった」

「僧侶…ありがとう。すべて話してくれて」

「ううん。ごめんね隠してて」

「とにかく前に進んで見よう…もう帰れないんだし…ね?」

「5年経てば帰れると言っておろうが」

「だっこ」僧侶は騎士に抱き着いた

「また始まったかの…ヤレヤレ」


---囚人の事が少し分かってきた---

---彼は選ばれた勇者だった---

---何かを知って暗殺されそうになった---

---でも生き残り囚人として過ごした---

---指輪を持ってたという事は---

---これから必ず会う筈だ---


更新日:2023-03-18 11:41:09

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