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14.憎悪

その時…魔王島地下


「ガガガ・・」(喉が焼けて声が出ない)

「ンガー」(まぶたも垂れ下がって目が開かない)


騎士はキマイラが絶命した後も意識を保って居た

全身焼けただれ…キマイラの巨体に押しつぶされ骨がバラバラに砕けても尚…

目の前で起こる惨劇から目を逸らさないで這いずり回る


「ほう?ブレスに焼かれてまだ息があるか」

「体表皮の70%以上を失うと生き残る可能性はゼロだよフハハハ」

「君の場合90%は失っている…直に体温が上がって死ぬ」

「呼吸器も焼けているな?面白い実験結果だ…だが興味は無い」



「ンガガ…」…鉄の柵に掴まり何とか体を持ち上げる


「フハハハまだ立つかね…見たまえ新たなキマイラの幼獣を」

「ガガガ」(エルフの娘)

「君はそのゴミの方が気になるのかね?」

「美しい四肢も動かなければタダのゴミだ…研究の材料にすらならん…持って帰るか?」

「そうか掃除を手伝ってくれようという訳か…フフフ鉄柵を上げてやろう」


ガラガラと音を立てて遮られて居た鉄の柵が上がった

もう目がわずかにしか見えていない

エルフの娘がいる所へ這いずり…前へ…前へ…


「フハハハそんなにそのゴミが欲しいかハハハ」


動かなくなったエルフの娘を抱きかかえた

涙があふれて来る



「研究室を汚さないで欲しいな…そのゴミと一緒にお前も処分してやる」

「冥土の土産に教えてやろう…この研究室は直接海に繋がっているのだよ」

「ゴミを海に捨てる為になハハハハ」

「最後に何か言いたい事はあるか?」

「ヴォォォォォ!!」

「フハハハ怖い怖い…負け犬にはお仕置きが必要だなハハハ」

「これが何か分かるかな?ノコギリだ…お仕置きをして海に捨ててやるフハハハハハハ」

「首と体が離れてしまえば忌々しい咆哮をする事もあるまい…」


僕はエルフの娘を抱えて必死に逃げた

這って…這って…這って…

アイツは執拗に追って僕に止めを刺そうとした

蹴とばし…又這って…崖から海に飛び降りた


---

---

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必死で逃げた

エルフの娘を抱えながら

目が見えないから

耳だけが頼りだった

漂流していた小舟によじ登り

二人で横たわった

彼女の傷口を手で何度も塞ごうとした

でもピクリとも動かない

耳を澄ませても

何の音もしない

もう動かない

もう居ない



リーン…

彼女が持って居た銀のアクセサリーが不意に鳴った

耳を澄ませば…彼女が存在していた事を僕に教える

その音が…心に溢れる憎悪を少しだけ払ってくれた気がする

リーン…


漂流

ただ小舟に揺られどれくらい経ったのだろうか

エルフの娘は海鳥にも好かれて居た様だ

海鳥が集まり彼女をついばむ

嫌がる素振りも無く…戯れている様に見えた


「お~い!!小舟が漂流してるぞ!!」

「どこだぁ!!?」

「あそこだ!!」

「人は乗ってそうか!?」

「見えねぇな…」

「お~い!!誰か居るかぁ!?」

「もっと寄せろぉ!!」

「ボートに何か乗ってるぞ!?」

「停船してくれぇ!!小船出せるか!?」

「おぅ!準備する!!」



小船

「お~い!!大丈夫かぁ?」

「うわぁ!!」

「こ、こりゃひでぇ…海鳥に突かれまくってる」

「亡くなって大分立ってるな」

「でも肌はまだ白いぜ?」

「こっちのデカイ遺体は…うわ!!焼け死んでるのか」

「金目の物だけもらって…うぉ!!」

「どうした?」

「デカイ方はまだ息があるぞ!!」

「おい!!おい!!だめだ…」

「とりあえずデカイ方は連れて行こう」

「白い方はどうする?」

「まぁ連れて帰って海葬してやるか」

「この白い方は女だな…」

「海鳥も女を食うってか?」

「おい!いたずらするなよ」


更新日:2023-03-24 08:23:32

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