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1.始まりの国

挿絵 180*240

ここはかつて栄えた魔法の国の一角

今ではその面影も無く冒険者が初めに訪れる国として

腕試しの猛者共が集い今武闘会が始まろうとしていた


始まりの国


その時…一人の勇者が訪れた

勇者は城門の前に立ち塞がる門番へ軽く一礼をした…


「止まれーい!!これより先は身分の無い物を通す事は出来ん!」

「何か身分を示す物はあるか?」

門番は手荷物をのぞき込み不審げにしていた

「怪しい物では御座いません。これを…」

懐から紋章の描かれた証を取り出し手渡す

「んん?これは勇者の証…しばし待たれよ…衛兵!!見張って置け!!」

小柄な衛兵と大柄な衛兵の2人が駆け寄って来る

「こんな貧乏臭い格好してるのが勇者か?」

「人は見かけに寄らないっていうけどね~ウフフ」

小柄な衛兵は特徴のあるコロコロした笑い声をした少女だった…続けて言う

「あまり失礼の無い様にした方が良いかも~」

「ううむ…軽装に帯剣だけで勇者には見えんのだが…」

「おい!よく顔を見せろ!フードを下ろせ!」

「あ…失礼しました」

深く被っていたフードを降ろしその顔を晒す

「なぬ?…女か?いや…背格好は男の様だな…肩幅もそこそこに…」

「あれ~?割と良いかも~ウフフ」

「これで勇者なら女子は放って置かないね…なんてね~」

「ぐぬぬ…こんなヤサ男に何が出来ると言うか!!」


そんなやりとりをして数分後…門番は足早に戻って来た


「衛兵!客人を通せ!失礼は無かっただろうな?」

「ハッ!!」

大柄な衛兵は急に態度を改め姿勢を正した

門番は先ほどとは違った態度で言う

「ささっ勇者殿付いて参られよ…衛兵から失礼はありませんでしたでしょうか?」

「いえ問題ありません…衛兵の仕事をしっかりこなして居ましたよ」

「いやはや失礼をお詫びします」


勇者は門番の後を付き甲冑を纏った大柄な者の前へと連れられた


「隊長!お連れ致しました!」

「ご苦労…門番は戻って元の任へ付け」

「あい分かりました…失礼します」

足早に去る門番の態度から規律の厳しさが伺え…勇者は少し笑みをこぼした

「これはこれは…勇者殿」

「私は始まりの国衛兵隊長である…よくぞこの国へ参った」

「国王様は謁見の間に居られる…これより私が城内を案内する」

「…が…その前に…持ち物を預からせて頂く」

帯剣と手荷物を覗き込むその者からフワリと女性の香りがした

「精鋭兵!勇者殿の持ち物を保管しておけ!」

「では勇者殿…参りましょう…付いて参られよ」


周囲のザワツキが聞こえる

おい見ろ!あれが選ばれた勇者らしいぞ

マジか…ちょっと俺にも見せろ


「静まれぇ!!道を開けよ!!」

隊長と呼ばれるその者の一括で規律が正された…

更新日:2023-03-17 14:58:23

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