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「だから私は、ホルを後継にと望んだんだ。…あれ程何度も過去生の記憶は無いと言い続けたにも関わらず、私の言い分を信じた者はホルだけだったからな。」
ホルは…信じて居た、のか…。
未だ頭が混乱していて現実を受け入れられそうに無いが、ホルが信じて居たという事実と、そしてこの男の存在を前にしては疑う事は出来まい。
「リュークは仕方無いとしてだ、お前は信じてくれても良かろう。」
最もらしい言い分として主張しているが、このまま放置して立ち去りたくなる気配を伴っている。
要するに…面倒臭いと言うものだ。
「あ〜そうだなぁ〜…リュークも城に来るまでは可愛げが有ったなぁ。…それより私は、娘と戯れたかったんだ。」
「娘と…。」
何と返して良いのか分からず、単にその言葉だけが口を突いて出た。
「娘の方が、可愛いじゃないか。」
可愛い………いや、何も言うまい。
「ティファンだけだ、私の癒しは。…そうだ、ティファンも私の本当の娘か。それなのに散々お前達は、それと知った上で、親子水入らずの時間を邪魔していたんだな。……やはり潰すか。」
「潰すとは、学園次元の事ですか?…ティファンが居た当時、彼女の立ち位置に口を出して居た者らは、未だ城に居ます。学園の者らとは無関係でしょう。」
「連帯責任だ。…同族を残して置く事自体に、意味が在ると思えん。」
うだつの上がらなさが漂う男だったが、この発想に、矢張りこの男は兄なのだと実感する。
「それに…城の奴らは、近いうちに去る事になるだろう。」
「親族の者ら…がですか?」
「お前は何も変化は無いか?…城の奴らは気付いて居るのか居ないのか……まぁ、気付いた処でどうしようも無い事だが。」
先程までの智力に乏しそうな気配とは打って変わり、懐かしき王の精彩さが蘇る。
「地脈の世代交代だ。」
…そう言えばリュークより、その様な報告は受けては居た。
衰退しつつ在った地脈が新しいものと交代したのだと…今度の地脈は若い世代の者らには波長が合いそうな事も、耳にしては居た。
我々年配の一族の者らには何も違いは感じられ無かった為、より強力に影響を及ぼす地脈と入れ替わったのだろうとの解釈に、終始していたのだった。
「あれは、貴方が…?」
「そう思うか。」
兄は、幾らか得意げにしている。
「そうだ、と言いたい処ではあるが…な。現実には違う。探って居たのは事実だがな。」
そう言って、兄は考えを巡らす仕草を見せる。
「お前達の次元を生かす意志を感じる。これは…ホルの仕業では無いな。そもそも人…か?」
兄は諦めたかの様に、頭を振った。
「私がやったのは、探し当てた処迄だ。…後は解らん。だが……自然に浮上して来た訳では無さそうだ。」
其処まで話し、兄は不意に楽しげに笑う。
その存在に心当たりがあるのか…何と無く、尋ねる気が向かなかった。

更新日:2023-05-06 15:52:26

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