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原始の太陽

『早速、月の力を試してみるか』
『そうだな』
私とすっかり同じ姿になったコノちゃん達が、互いに顔を見合わせて頷き、あの途轍もなく大きな月に対峙した。
『デカいな』
『これは、一人じゃ無理だな』
『確かに』
『一人は全てと同じ! 全ては一人と同じ!』
そう叫ぶと、コノちゃん達が共鳴を始めた。
コノちゃん達に感じる月の力が、増幅されていく。
辺りに力が満ち満ちて、先生や生徒の皆んなが苦しそうにし始めた時、その力は頂点に達した。
『反転だ!』
コノちゃん達が叫ぶと、月が…ほんの少しだけ遠のいた。
『いけんじゃないか?』
『やってみるもんだな』
『怖い方のお父ちゃんの、修行の成果だな』
『思い出すだけでも恐ろしい…』
『同調が弱まってんぞ!』
『ヤバい!』
『五割増の特訓を思い出せ!』
コノちゃん達の白い輝きが強まり、それが月に向かって放出された。
すると、月が少しずつ…ほんの少しずつではあるけれど、私達から遠のいて行った。
『よし、このまま行けー!』
『これが最後だ!』
今までで一番強い輝きが、コノちゃん達から放たれた。
生徒の皆んなや先生達も、息を呑んでコノちゃん達を見守っている。
コノちゃん達の白い光を浴びた月は、弾かれるかのように勢いを増し、私達からみるみるうちに遠ざかって行った。
生徒の皆んなから、安堵の溜息が漏れる。
『何とかなったな』
『縁切りみたいなもんだったな』
『月の力は、自分らの力とあんまり変わらんな』
コノちゃん達と月の力は、相性が良さそうだった。
『駄目なら、向こうのお父ちゃんがやってくれんだろ』
『その後お仕置きだな』
『何とかなって、助かった!』
コノちゃん達が楽しげに、互いに手を打ち合わせていた。
『あとは、お母ちゃんか』
コノちゃんの言葉を聞いたとほぼ同時に、私の中に熱を感じた。
私の中にある熱は、少しずつ増えていき…次第に私の中に収まらなくなっていく。
そして私から漏れ出し始めた熱は、光と成って私を包んだ。
私を包む…黄色を帯びた白い光。
それは私の中に、ずっと在ったのだと知る。
これは確かに、皆んなのものだ。
けれども、私自身のものでもある。
学園長が言っていた、皆んなの為の思いというものは、決して間違ってはいなかったけれど、でも…正しくも無かった。
私も、皆んなのうちの一人。
ホルも、皆んなのうちの一人。
…大丈夫、私は間違ってなんか無い。
私は、何にも変わらなくって良い。
私は私のまんまで良かったんだ。
…そう気付くと、私を包んでいた光が、私の中へと再び収まって行った。

更新日:2023-05-04 19:56:02

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