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教室に入ると先生が「前回と同じ場所に」と言うので、お友達と離れて、私は後ろの席へ向かった。
席に座ってアスタロトの本をしばらく眺めていると、先生が教壇に立って「皆さん揃った様ですので、授業を始めます」と言った。
「前回は後見人の方と共に召喚しましたが、今回は自分の能力だけで行います。」
先生が、みんなを見渡した。
「前回使用した用紙でも良いですが…皆さんそれぞれ、自分に合った形で召喚頂いて構いません。…皆さん各自でご用意頂いていますね。」
そう言って、先生は満足げに軽く頷いた。
「前回、契約まで済んだ方はそれを召喚しても良いですし、それぞれで事前に契約済みのものでも構いません。もちろん、一人で一からの召喚を試みても良いでしょう。…これは競争ではありません。自分の段階に応じた学びをお願いします。」
先生がそう言うと、みんなが色々と準備を始めた。
私もアスタロトの本を両手で掴んで、軽く持ち上げてみた。
………これから、どうすれば良いのかなっ?
『取り敢えず、本…開きなよ』
呆れた感じのアスタロトの声が響いて来た。
アスタロトの言う通り、何枚かページをめくってみる。
すると陣の絵があったので、そこを開いて、机の上に置いてみた。
『契約は済んでるから、直ぐ出れるけど…どうする?』
「アスタロトと学校で一緒にいれるのっ⁈」
『それ以外、何するってのさ…』
「そっか!」
アスタロトの呆れてる顔が浮かんだ。
『じゃあ…初めに、二人だけの取り決めをする』
「取り決めっ?」
『あんたと私の、契約の形。…契約自体はアイリスが済ませてるけど、私達二人の間の条件は決めてない。アイリスは其処までやんなかったからな…きっと文句言うだろうけど、気付かないのが悪い』
アスタロトはちょっと意地の悪い笑い方をしていて、注意した方が良いのかなって思った。
『悪いようにはしないさ。…って言うか、無理。あんたの周り凄すぎるから。』
アスタロトの言っている事は本当な気がするから、注意はしないで、そのままにしておく事にした。
『それじゃあ…契約終了の時は、私が自分で選びたい。…問題無い?』
「ん〜…私が勝手に決めて良いのかなっ?…アイリスに何か言われたりしないっ⁉︎」
『流石に本質に気付くね。…主は伊達じゃ無いってか』
何となく、アスタロトは私を試してるような感じがした。
『じゃあ…何らかの予期せぬ形で契約不履行になった時、あんたの能力の一つを自由にする権利を貸してよ』
「それって…どういう意味?」
『何かがあって私達の契約が勝手に解消された時、あんたの力を貸してくれって意味だよ。…寄越せって言ってる訳じゃあ無い。』
戸惑ってると、アスタロトの軽い笑いが響いてきた。
それは何だかアイリスの笑い方みたいで、ちょっと安心する。
『あんたが頑張って学んでんのに、途中で放り出す様な事はしない、って事だよ』
力を貸すとか、何だか気になる言葉はあったけど、今のアスタロトは信じても良い気がした。
「じゃあ……信じるよっ! アスタロトの言う事の通りにするっ!」
そう言うと、アスタロトの本は、真っ白な綺麗な光で輝いた。
「………悪魔を信じちゃダメだろ。」
光の中から現れたアスタロトが、アイリスみたいに笑いながら言った。
「アスタロト、悪魔だったっけ⁉︎」
「さてね…人が勝手にそう言い出した気もするが。…これでも有名な悪魔なんだぜ?」
悪戯っぽく笑うアスタロトは、とっても綺麗で、やっぱり何処と無くアイリスに似ていた。
狭間の時とは違って、今のアスタロトは羽が無く、何故か髪の毛も黒くって軽く結い上げられている。
そんなアスタロトも、アイリスと同じでお姫様みたいだなって思った。
「…ん?……あぁ、コレ?」
アスタロトが、自分の髪の毛を指差して尋ねる。
「うん」
「元々こうなんだよ。あの赤毛は、あんたが私をアイリスの物って意識してたから、あぁなったってだけ。……この姿は久しぶりだけどね。」
新しいアスタロトの姿について考えてたら、アスタロトが何か思い出したような仕草をした。
「それから、契約期間は学んでる間だけだよ。…アイリスがそう決めてた。」
契約終了の時は、アスタロトが自分で決めたいって言っていたけど、本当はもうアイリスが決めてしまっていたらしい。
「別に、契約終了したからって、それっきりになる訳じゃないさ。…狭間じゃ今まで通り一緒だろ。」
「…そうだったねっ!」
何だかお別れみたいな気分に勝手になっていたけど、そうじゃ無いって分かって安心した。
「アイリスがそうしたのは…あんたにこれ以上、色んな事を背負わせたく無いからだろうって思ってる。」
そう言うアスタロトは、何となく、ちょっと寂しげに感じられた。

更新日:2023-04-15 16:44:09

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