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アスタロト
ゲートを潜ると、お庭の様な所に出た。
こないだもここに出たので、教室への道は大体覚えている。
少し薄暗い並木道を歩いていると、ピンク色の髪の毛の女の子が隣にやって来た。
「教室に着く前に会えて良かった! あなたとお話できるもの。」
「うんっ! また会えて嬉しいっ。」
この前会った時と同じまま、仲良くお話してくれたので、とても嬉しくなった。
お友達も嬉しそうに笑ってくれたので、もっと嬉しくなる。
並木道が終わって、校舎に入った。
「その本が、あの…あなたのお供の依代になるの? 何だか、あの子とは印象が違った感じだけれど。」
アスタロトの本を見ながら、お友達が不思議そうにしている。
「これは、ここに来る前に、お姉ちゃんが用意してくれた子なの。えっと…連れて行って良いって、学校から聞いてたから。」
「あなたの姉って……赤毛の…よね。」
「うんっ、そうだよっ⁉︎」
「そう、あの人が……そうね、そんな感じよね。この本。」
お友達は何か考えてる風だったけど、すぐにそれを止めて私の方を見た。
「事前に言われた契約の件は、一人で召喚出来ない人もいるから、備えの為にって言われてた筈なんだけど…あなたなら問題無さそうなのに、随分慎重なのね。」
今日は、このちゃん達は何か用事があるみたいで、みんな狭間に残っている。
この前の授業とは違って、今回は一人で召喚をするお勉強なので、アスタロトの方が都合が良いって、このちゃん達は言っていた。
このちゃん達は仲間も増えたし、きっと色々やる事があるんだろう。
私は私で、しっかり頑張らないとねっ!
お友達にどうお返事したら良いのか考えながら、校舎の廊下を左に曲がると、お友達が驚いた顔で「こっちよ?」と右の方を指して言ってくれた。
「ごめんねっ? 私うっかりしちゃって…この前、ここを左に曲がった気がしたから。」
「えぇ、この前は確かにここを左に曲がったわ。…でも、今日はここを右に曲がった先に行かなきゃいけないのよ。」
お友達は、すごく真剣な目で私を見ている。
「縁に引かれて、教室へ辿り着ける仕組みになってるって聞いてたのに…。」
「そうなんだねっ⁉︎ 私…前と同じ場所に行かないとって思ってて、そればっかり考えてたから、気付かなくって…。」
お友達と一緒じゃなかったら、迷子になっていた所だった。
私、もっとしっかりしないといけないなぁ……。
「あぁ、そんな顔しなくって良いのよ! ただ驚いただけ! 普通は、どうしても行きたくなってしまう筈だから。…無視出来るのは、むしろ凄い事なのよ。」
お友達は少し考えてから、言葉を続けた。
「そうよ…力が拮抗してるか、それ以上じゃ無いと、そんな風には…。力が全く無い子な訳は無いし……他の人達には勘違いされてしまうかも知れないけど、あなた…気にしちゃダメだからね!」
「………ありがとうっ!」
お友達はアイリスみたいに少し難しい事を言っていたけれど、気にしちゃダメって言ってくれたのが、とても嬉しかった。
「じゃあ右に行きましょう。…次も私と一緒に行けば良いのよ。」
「良いのっ⁉︎」
「もちろんよ。…ゲートの所で待ち合わせね?」
「うんっ! ありがとうっ!」
勢い良く頷いて、お友達の後に続いて右に曲がった。
「……ねぇ、私の髪の色…何色に見える?」
「ピンク色だよっ?」
「この前から、そう視えてたの?」
「うんっ!」
髪がとても目立つ素敵な色だったから、この子の事を良く覚えられた。
「そう……周りへ私の情報を与えない様に、他の人には無難な茶色に見えてる筈なの。」
「そうなんだっ? …気を付けるねっ⁉︎」
他の人の前で、うっかり髪の色の話をしないように気を付けなきゃ。
「…この色ね、桜の色なの。桜って言うのは…私の国の花。」
自分の事は人に話さないようにって聞いてたから、その事を知ってしまって良いのかなって悩んでたら、お友達が少し楽しそうに笑った。
「あなたにだけ、よ。…あなたのお供がね、私の国の服を着てたから、ご縁を感じたの。」
このちゃん達が前合わせの着物を着ていたから、お友達はその事を言っているようだった。
お友達は普通のお洋服を着ているけれど、元の世界へ戻ったら、このちゃん達と同じ様な物を着てるんだろうか。
「あなたのルーツも私と近い……ううん、あなたのお兄さん達を視たから解るわ。とても古い…古代の縁よね。」
お友達は、何故だか少し、寂しそうに笑った。
「…家族に凄い人がいるのって大変よね。私も…後見の方が凄くって…。」
お友達は、小さくため息を付いた。
「…仲良くして頂戴ね。」
「うんっ! よろしくねっ⁉︎」
ピンク色の髪の毛を、ふんわりと揺らしながら、お友達が可愛らしく笑った。
こないだもここに出たので、教室への道は大体覚えている。
少し薄暗い並木道を歩いていると、ピンク色の髪の毛の女の子が隣にやって来た。
「教室に着く前に会えて良かった! あなたとお話できるもの。」
「うんっ! また会えて嬉しいっ。」
この前会った時と同じまま、仲良くお話してくれたので、とても嬉しくなった。
お友達も嬉しそうに笑ってくれたので、もっと嬉しくなる。
並木道が終わって、校舎に入った。
「その本が、あの…あなたのお供の依代になるの? 何だか、あの子とは印象が違った感じだけれど。」
アスタロトの本を見ながら、お友達が不思議そうにしている。
「これは、ここに来る前に、お姉ちゃんが用意してくれた子なの。えっと…連れて行って良いって、学校から聞いてたから。」
「あなたの姉って……赤毛の…よね。」
「うんっ、そうだよっ⁉︎」
「そう、あの人が……そうね、そんな感じよね。この本。」
お友達は何か考えてる風だったけど、すぐにそれを止めて私の方を見た。
「事前に言われた契約の件は、一人で召喚出来ない人もいるから、備えの為にって言われてた筈なんだけど…あなたなら問題無さそうなのに、随分慎重なのね。」
今日は、このちゃん達は何か用事があるみたいで、みんな狭間に残っている。
この前の授業とは違って、今回は一人で召喚をするお勉強なので、アスタロトの方が都合が良いって、このちゃん達は言っていた。
このちゃん達は仲間も増えたし、きっと色々やる事があるんだろう。
私は私で、しっかり頑張らないとねっ!
お友達にどうお返事したら良いのか考えながら、校舎の廊下を左に曲がると、お友達が驚いた顔で「こっちよ?」と右の方を指して言ってくれた。
「ごめんねっ? 私うっかりしちゃって…この前、ここを左に曲がった気がしたから。」
「えぇ、この前は確かにここを左に曲がったわ。…でも、今日はここを右に曲がった先に行かなきゃいけないのよ。」
お友達は、すごく真剣な目で私を見ている。
「縁に引かれて、教室へ辿り着ける仕組みになってるって聞いてたのに…。」
「そうなんだねっ⁉︎ 私…前と同じ場所に行かないとって思ってて、そればっかり考えてたから、気付かなくって…。」
お友達と一緒じゃなかったら、迷子になっていた所だった。
私、もっとしっかりしないといけないなぁ……。
「あぁ、そんな顔しなくって良いのよ! ただ驚いただけ! 普通は、どうしても行きたくなってしまう筈だから。…無視出来るのは、むしろ凄い事なのよ。」
お友達は少し考えてから、言葉を続けた。
「そうよ…力が拮抗してるか、それ以上じゃ無いと、そんな風には…。力が全く無い子な訳は無いし……他の人達には勘違いされてしまうかも知れないけど、あなた…気にしちゃダメだからね!」
「………ありがとうっ!」
お友達はアイリスみたいに少し難しい事を言っていたけれど、気にしちゃダメって言ってくれたのが、とても嬉しかった。
「じゃあ右に行きましょう。…次も私と一緒に行けば良いのよ。」
「良いのっ⁉︎」
「もちろんよ。…ゲートの所で待ち合わせね?」
「うんっ! ありがとうっ!」
勢い良く頷いて、お友達の後に続いて右に曲がった。
「……ねぇ、私の髪の色…何色に見える?」
「ピンク色だよっ?」
「この前から、そう視えてたの?」
「うんっ!」
髪がとても目立つ素敵な色だったから、この子の事を良く覚えられた。
「そう……周りへ私の情報を与えない様に、他の人には無難な茶色に見えてる筈なの。」
「そうなんだっ? …気を付けるねっ⁉︎」
他の人の前で、うっかり髪の色の話をしないように気を付けなきゃ。
「…この色ね、桜の色なの。桜って言うのは…私の国の花。」
自分の事は人に話さないようにって聞いてたから、その事を知ってしまって良いのかなって悩んでたら、お友達が少し楽しそうに笑った。
「あなたにだけ、よ。…あなたのお供がね、私の国の服を着てたから、ご縁を感じたの。」
このちゃん達が前合わせの着物を着ていたから、お友達はその事を言っているようだった。
お友達は普通のお洋服を着ているけれど、元の世界へ戻ったら、このちゃん達と同じ様な物を着てるんだろうか。
「あなたのルーツも私と近い……ううん、あなたのお兄さん達を視たから解るわ。とても古い…古代の縁よね。」
お友達は、何故だか少し、寂しそうに笑った。
「…家族に凄い人がいるのって大変よね。私も…後見の方が凄くって…。」
お友達は、小さくため息を付いた。
「…仲良くして頂戴ね。」
「うんっ! よろしくねっ⁉︎」
ピンク色の髪の毛を、ふんわりと揺らしながら、お友達が可愛らしく笑った。
更新日:2023-04-15 11:41:33