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閑話
アイリスを伴って狭間に戻ると、オルスが待っていた。
「城の方は宜しいのですか?」
「あぁ、問題無い。」
私が全て観ていた事を分かった上で、兄は素知らぬ様を貫いている。
「この子らと少し話をしていた。…コノで良いのか?」
「あのお二人は、産み出した子に付いては、そう呼ばれるお積もりかと。」
私達の頭上を幾人かの幼児が飛び交う。
その姿は先程までと同様に、朱色の東洋の衣を身に付けたままだった。
「この子らも、そう呼ばれる気になってる様だ。」
『おんなじだからな』
『あの子とも、一つになった』
『我々もあの子も、お父ちゃんとお母ちゃんの子供だ』
『その通りだ』
オルスは苦笑じみては居るが、幾らか楽しげにはしている。
コノと名付けられたこの子らに対して、そう悪い印象も抱いていないのだろう。
『杖も、問題無いらしい』
一人の子がアイリスに近付いて、そう語り掛けている。
杖を手にした子が、誇らしげに掲げて飛んで行く。
「本当に大丈夫なのか?…それは、そんな気軽に扱って良い代物じゃあ無いぞ?」
『まぁまぁ』
『固いこと言うなって』
「そうは言ってもだな…それは伝説級の代物で、神話に載る程の神器だぞ?…お前らのオモチャには過ぎたる代物だ。」
『オモチャとは随分な言草だな』
『我々は見た目は子供だが、中身も子供なんだぞ』
「なんだソレ…」
アイリスが上手い具合に、けむに巻かれている。
「普段は仕舞っておくように、言い聞かせてある。」
「ちゃんと聞いたのか?…お前ら。」
『問題ない』
『おばちゃんの杖と一緒に飾っとくからな』
「なっ…まだ、アレを持ってたのか……って、お前らが管理してんのか?」
『誰がやるんだ』
『お母ちゃんか?』
『余計に危険だな』
『お父ちゃんも、お母ちゃんの事以外は案外サッパリだからな』
アイリスは何も返す言葉が無いと言った体で、黙り込んでいた。
「…ホルが戻って来る様だ。」
そう言って亀裂を造り、その中へと潜って行く。
少しして現れたのは…どうやらホルの様だ。
亀裂の中で修正を成したのだろう、二人の身体の入れ替わりは、元に戻っていた。
「テュファンは、ご一緒では無いのですか?」
「少し説明を受けてから、戻って来る事になってる。」
アイリスが、オルスの方はどうなったのかと案じる様子を見せている。
「亀裂の中でお二人の身体を元に戻し、そのまま城の方へお戻りになられた様ですよ。」
「そ、そうか……何だか奇妙な感じだな…。」
元はホルの身体だったものを、オルスが取り戻し、城に戻る。
単にそれだけの事なのだが、アイリスには妙に感じるらしい。
「……薄いな。」
ホルが呟く。
「あぁ、私も感じた。…影響が無くなった訳では無いようだが……。」
そう言って、アイリスは辺りを見渡している。
薄いと評されているのは、空間の色の事だ。
学園へ訪れる前は、非常に濃く感じていた朱の気配が、今は殆ど無い。
『確認させられたからな』
『出来る事をやらんとな』
そう言って、幼児が杖をクルクルと回しながら飛んで行く。
「だからっ…それはそんな雑に扱うモンじゃ……!」
アイリスが叱り飛ばすが、意に介せずと言った風で去って行った。
…コノと名付けられた子供が、テュファンとの繋がりを絶っていたのは、学園長…あの次元の代表と言える存在だった。
「これで随分過ごし易くなりました。…コノのお陰ですね。」
『良いってことよ』
『楽しかったしな』
『得られた物もデカい!』
コノは、懲りずに杖を振り翳していた。
「それでは…テュファンが戻って来たら、私達も城へ戻りましょうか。」
アイリスが名残惜しそうにしているが、あの次元の影響が薄くなった今となっては、再び囚われ兼ねない。
テュファンと軽く言葉を交わし、深入りする前に戻らねばならなくなるだろう。
…ふとコノの中に、三角の耳と尾の付いたもの達が紛れ込んでいるのが目に入った。
どうやら、あれも一つになった様だった。
「城の方は宜しいのですか?」
「あぁ、問題無い。」
私が全て観ていた事を分かった上で、兄は素知らぬ様を貫いている。
「この子らと少し話をしていた。…コノで良いのか?」
「あのお二人は、産み出した子に付いては、そう呼ばれるお積もりかと。」
私達の頭上を幾人かの幼児が飛び交う。
その姿は先程までと同様に、朱色の東洋の衣を身に付けたままだった。
「この子らも、そう呼ばれる気になってる様だ。」
『おんなじだからな』
『あの子とも、一つになった』
『我々もあの子も、お父ちゃんとお母ちゃんの子供だ』
『その通りだ』
オルスは苦笑じみては居るが、幾らか楽しげにはしている。
コノと名付けられたこの子らに対して、そう悪い印象も抱いていないのだろう。
『杖も、問題無いらしい』
一人の子がアイリスに近付いて、そう語り掛けている。
杖を手にした子が、誇らしげに掲げて飛んで行く。
「本当に大丈夫なのか?…それは、そんな気軽に扱って良い代物じゃあ無いぞ?」
『まぁまぁ』
『固いこと言うなって』
「そうは言ってもだな…それは伝説級の代物で、神話に載る程の神器だぞ?…お前らのオモチャには過ぎたる代物だ。」
『オモチャとは随分な言草だな』
『我々は見た目は子供だが、中身も子供なんだぞ』
「なんだソレ…」
アイリスが上手い具合に、けむに巻かれている。
「普段は仕舞っておくように、言い聞かせてある。」
「ちゃんと聞いたのか?…お前ら。」
『問題ない』
『おばちゃんの杖と一緒に飾っとくからな』
「なっ…まだ、アレを持ってたのか……って、お前らが管理してんのか?」
『誰がやるんだ』
『お母ちゃんか?』
『余計に危険だな』
『お父ちゃんも、お母ちゃんの事以外は案外サッパリだからな』
アイリスは何も返す言葉が無いと言った体で、黙り込んでいた。
「…ホルが戻って来る様だ。」
そう言って亀裂を造り、その中へと潜って行く。
少しして現れたのは…どうやらホルの様だ。
亀裂の中で修正を成したのだろう、二人の身体の入れ替わりは、元に戻っていた。
「テュファンは、ご一緒では無いのですか?」
「少し説明を受けてから、戻って来る事になってる。」
アイリスが、オルスの方はどうなったのかと案じる様子を見せている。
「亀裂の中でお二人の身体を元に戻し、そのまま城の方へお戻りになられた様ですよ。」
「そ、そうか……何だか奇妙な感じだな…。」
元はホルの身体だったものを、オルスが取り戻し、城に戻る。
単にそれだけの事なのだが、アイリスには妙に感じるらしい。
「……薄いな。」
ホルが呟く。
「あぁ、私も感じた。…影響が無くなった訳では無いようだが……。」
そう言って、アイリスは辺りを見渡している。
薄いと評されているのは、空間の色の事だ。
学園へ訪れる前は、非常に濃く感じていた朱の気配が、今は殆ど無い。
『確認させられたからな』
『出来る事をやらんとな』
そう言って、幼児が杖をクルクルと回しながら飛んで行く。
「だからっ…それはそんな雑に扱うモンじゃ……!」
アイリスが叱り飛ばすが、意に介せずと言った風で去って行った。
…コノと名付けられた子供が、テュファンとの繋がりを絶っていたのは、学園長…あの次元の代表と言える存在だった。
「これで随分過ごし易くなりました。…コノのお陰ですね。」
『良いってことよ』
『楽しかったしな』
『得られた物もデカい!』
コノは、懲りずに杖を振り翳していた。
「それでは…テュファンが戻って来たら、私達も城へ戻りましょうか。」
アイリスが名残惜しそうにしているが、あの次元の影響が薄くなった今となっては、再び囚われ兼ねない。
テュファンと軽く言葉を交わし、深入りする前に戻らねばならなくなるだろう。
…ふとコノの中に、三角の耳と尾の付いたもの達が紛れ込んでいるのが目に入った。
どうやら、あれも一つになった様だった。
更新日:2023-04-09 21:48:23