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木造校舎の、とある教室へ立ち入る。
すると皆が好き勝手に雑談していたものの、私達に気付いた者から順に振り向き…身体をこわばらせ、各々が異なる表情のまま固まる。
ある者は恐怖に。
ある者は憧れに。
そしてまたある者は羨望に…。
狼狽する者、歓喜に打ちひしがれる者、首を垂れて涙を流す者…。
それは当事者で無ければ、滑稽だと蔑んで終わらせただろう。
いや…当事者であれども、滑稽だと嘲笑ってやりたくもなる…が…。
「…こうも顕著に現れるんだな。」
ポツリと呟いた私へ、リュークが軽く苦笑する。
それは別に大した事の無い…例えばティファンに対して見せる様な純粋な笑みでは無いにも関わらず、何処かしこから黄色い歓声があがり…そして、それを嗜める者の頬も上気すらしていた。
…先が思いやられる。
思わず溜息が溢れた。
この学園へ訪れる前に聞かされて居た事なのだが、此処では周囲が『皆それぞれ自分の縁に沿った形象』に視えるらしい。
私が塔に居座って居た時も、異なる次元の者の目には、あの塔がそれぞれの者に応じた形象を纏って居た様だったが、あれに似た様な事なのだろう。
あの時は、その形象に囚われてしまっては元の次元へは戻れなかったが、この学園ではそこまでの強制力は無く…単に自己確認を促す為の仕様の様だった。
此処はあくまで学びの場だ。
自分の縁や素養を分かり易くし、それによって気付きを促し、自己の成長を目的としているらしい。
…と、そこ迄は理解はするが…まるで見せ物になったかの様な現状は、たまったものでは無い。
私達が何に視えているのかは、大体察しは付く。
例えばリュークを見る者らの目付きは、それは憧れで…その者らの纏う雰囲気からすると、宗派は我々の風土に近そうだ。
となると…恐らくリュークは、天使や天上の神等にでも視えているのだろう。
オルスに対しては…若干の差異はあれども、おおよそ畏怖や羨望の佇まいで一致している。
オルスは相当古い時代からの縁を有して居そうなので、時代が流れた先で…宗教が分派したり解釈に変化等が生まれた結果、裾野では細かい処に違いが出ているという事なのだろう。
そして私に対しては…青ざめる者、絶句する者、睨み付ける者…。
取り敢えず其れらにひと睨みしてはやったが、みな直ぐに恐れ慄いて目を逸らす。
見下される対象では無さそうなのが、まだ幸いか。
勝手に恐怖の対象にされるのには慣れたものだ…好きにしろと言いたい処である。

更新日:2023-03-26 23:07:18

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