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vermilion
軽く目頭を押さえ…目を瞑り、分厚い本を閉じた。
この世とは異なる世界に付いて描かれたこの読み物が、別の次元に起こった事実を語っているという事を知るのは、私を含めて数人しか居ない。
他の者らには、子供染みた冒険活劇に見得るだろう。
この部屋に出入りする女官らは恐らく…出戻りの難物が、また怪訝な物を読み始めたと笑う事はあれども、そう訝しがる事は有るまい。
そのままに本を卓上に放置し、気分転換にと部屋を出た。
別に、無心に読み耽っていた訳では無い。
二.三行読み進めた辺りで懐かしい思いに囚われ…つい遠い日の出来事に思いを馳せ…と、連日その繰り返しだ。
あの本をティファンから手渡されてから、そろそろふた月は経つ頃だが、まだ殆ど手付かずに近い状態だった。
…手付かずと言えば、アスタロトの事もそうだ。
ホルはあれが、私と関係があるかの様な言い方をしていた。
雰囲気からして、恐らく過去にアスタロトが何かを仕出かしていたのか、それか私と縁があったかの、どちらかだろう。
過去に縁を有していたとなれば、私が気付かぬ筈は無いとは思うものの、私があれと契約したのは『悪魔』の方だ。
私が感知し得るのは、悪魔の側面の方のみだったのかも知れない。
ホルの言い様からして、本に入る前の存在…女神も悪魔も内面に有した個人が、と言う事であれば、また違ってくるのだろうか。
一人で考えていても仕方ない、ホルはオルスに聞けと言っていたのだから聞けば良いとは思うものの、何と無くその機会を失ったままになっていた。
この世とは異なる世界に付いて描かれたこの読み物が、別の次元に起こった事実を語っているという事を知るのは、私を含めて数人しか居ない。
他の者らには、子供染みた冒険活劇に見得るだろう。
この部屋に出入りする女官らは恐らく…出戻りの難物が、また怪訝な物を読み始めたと笑う事はあれども、そう訝しがる事は有るまい。
そのままに本を卓上に放置し、気分転換にと部屋を出た。
別に、無心に読み耽っていた訳では無い。
二.三行読み進めた辺りで懐かしい思いに囚われ…つい遠い日の出来事に思いを馳せ…と、連日その繰り返しだ。
あの本をティファンから手渡されてから、そろそろふた月は経つ頃だが、まだ殆ど手付かずに近い状態だった。
…手付かずと言えば、アスタロトの事もそうだ。
ホルはあれが、私と関係があるかの様な言い方をしていた。
雰囲気からして、恐らく過去にアスタロトが何かを仕出かしていたのか、それか私と縁があったかの、どちらかだろう。
過去に縁を有していたとなれば、私が気付かぬ筈は無いとは思うものの、私があれと契約したのは『悪魔』の方だ。
私が感知し得るのは、悪魔の側面の方のみだったのかも知れない。
ホルの言い様からして、本に入る前の存在…女神も悪魔も内面に有した個人が、と言う事であれば、また違ってくるのだろうか。
一人で考えていても仕方ない、ホルはオルスに聞けと言っていたのだから聞けば良いとは思うものの、何と無くその機会を失ったままになっていた。
更新日:2023-03-17 18:42:43