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移送
青色の制服を着た2人の女性、一人は昨春大学を卒業して刑務官になったばかりの千咲、もう一人はそろそろ経験も10年を迎える佑佳子、若い方の千咲は現場に立つようになって未だ数か月、先輩で教育役の佑佳子は最も危険が少ないと思われる新入者と思われる友梨菜であれば最初の経験にはちょうどよいと思い、千咲に対し友梨菜に手錠をかけるよう命じた。慣れない手つきで、友梨菜に手錠を施し、間の穴に縄を通し友梨菜のジャケットの上に巻き付ける。研修では何度もしてきたことでも本当の受刑者を目の前にすると同じことはうまくできない。腰縄を巻き付けるとすぐに佑佳子から、もっとしっかり巻いてという注意が入る。今度はグッと力いっぱいで縄を巻き付ける、友梨菜の瞳から涙が溢れだし、肌色のストッキングで覆われた太腿に落ちていく、手錠と腰縄の間が短すぎたのか、友梨菜はその涙を拭うことができない。研修で受刑者の役を務めた刑務官は当然涙など流さないが、やはり実際にやると見ているのは辛い。車が早く拘置所に着いてほしいという気持ちで千咲は腰縄を握り続ける。
移送車の窓には金網がされていてその金網越しに街の景色が流れていく。涙のために滲んで見える友梨菜の瞳が見つめる景色、通っていた大学やその通学路、アルバイトをしていて賄いのケーキやコーヒーも気に入っていたカフェ、自由な生活を楽しむ学生たちの笑顔も流れ、それらが涙と金網の二重のスコープの先に展開していくが、今の自分は自由に手を動かすことさえできない。やがて街の景色は見慣れないものへと変化すると、高い灰色の塀が現れ移送車は拘置所の門にくぐり、新入者検査室のある建物に横付けされた。佑佳子に促されて車を降り、そのまま検査室に通された。まずは所持品の検査、刑務所に持ち込める私物には厳しい制約があるが両親は、友梨菜が気に入っていた衣服や簿記や英語から旅行管理者まで様々な資格試験の参考書、使用できないと解っているのに今まで使用してきた化粧品などボストンバッグ1つ分になるほどの荷物が開かれ、千咲が1つ1つを丁寧に調べながらそのリストを作成していく。所持品が多いため1時間以上はかかっただろうか、備考欄もきちんと書くように佑佳子が書き方を指導していく。そしてそれが終わるといよいよ身体検査、身に着けている衣服は総て奪われ、いよいよ受刑服に着替えさせられるときだ。白の肌着とショーツ、いやもとは白だったのだろうが肌着は小さな穴が無数に空き、黄色に近く、ショーツは黄色に加えて茶色のシミも目立つ、やはりこれを受け入れるのは抵抗があるがそのようなことは言えないのが今の友梨菜である。そしてゴムの伸びた水色のジャージとジャージと同じ生地のショートパンツ、友梨菜にとっては高校の体操着とよく似たデザインであり、違いはショートパンツの丈が少し短いくらいか、とはいえ股下は10㎝程度あるので、さらに短いものを私服で使用していた友梨菜にとってはそこまでの抵抗はない。一応は自由な生活ができたときに近い服を身に着けられることにわずかな安心感を覚えながら、いよいよこれから生活する房へと、再度手錠と腰縄を施された友梨菜は歩いていく。履物も当然奪われ、やはり受刑者は裸足での生活をするのかと覚悟した友梨菜であったが、歩き出す前に千咲から42と書かれた茶色のゴムサンダルを差し出された。この42と言う番号がこれからの友梨菜の拘置所での名前になるという。素足でゴムサンダルを履いた友梨菜は拘置所の何度も正常されている鉄格子のを、通るたびに千咲が鍵を開け閉めしながら、長い廊下を歩いていった。
移送車の窓には金網がされていてその金網越しに街の景色が流れていく。涙のために滲んで見える友梨菜の瞳が見つめる景色、通っていた大学やその通学路、アルバイトをしていて賄いのケーキやコーヒーも気に入っていたカフェ、自由な生活を楽しむ学生たちの笑顔も流れ、それらが涙と金網の二重のスコープの先に展開していくが、今の自分は自由に手を動かすことさえできない。やがて街の景色は見慣れないものへと変化すると、高い灰色の塀が現れ移送車は拘置所の門にくぐり、新入者検査室のある建物に横付けされた。佑佳子に促されて車を降り、そのまま検査室に通された。まずは所持品の検査、刑務所に持ち込める私物には厳しい制約があるが両親は、友梨菜が気に入っていた衣服や簿記や英語から旅行管理者まで様々な資格試験の参考書、使用できないと解っているのに今まで使用してきた化粧品などボストンバッグ1つ分になるほどの荷物が開かれ、千咲が1つ1つを丁寧に調べながらそのリストを作成していく。所持品が多いため1時間以上はかかっただろうか、備考欄もきちんと書くように佑佳子が書き方を指導していく。そしてそれが終わるといよいよ身体検査、身に着けている衣服は総て奪われ、いよいよ受刑服に着替えさせられるときだ。白の肌着とショーツ、いやもとは白だったのだろうが肌着は小さな穴が無数に空き、黄色に近く、ショーツは黄色に加えて茶色のシミも目立つ、やはりこれを受け入れるのは抵抗があるがそのようなことは言えないのが今の友梨菜である。そしてゴムの伸びた水色のジャージとジャージと同じ生地のショートパンツ、友梨菜にとっては高校の体操着とよく似たデザインであり、違いはショートパンツの丈が少し短いくらいか、とはいえ股下は10㎝程度あるので、さらに短いものを私服で使用していた友梨菜にとってはそこまでの抵抗はない。一応は自由な生活ができたときに近い服を身に着けられることにわずかな安心感を覚えながら、いよいよこれから生活する房へと、再度手錠と腰縄を施された友梨菜は歩いていく。履物も当然奪われ、やはり受刑者は裸足での生活をするのかと覚悟した友梨菜であったが、歩き出す前に千咲から42と書かれた茶色のゴムサンダルを差し出された。この42と言う番号がこれからの友梨菜の拘置所での名前になるという。素足でゴムサンダルを履いた友梨菜は拘置所の何度も正常されている鉄格子のを、通るたびに千咲が鍵を開け閉めしながら、長い廊下を歩いていった。
更新日:2023-03-03 11:32:00