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死にゆく星

オレンジの星アルカーナからやってきたセムは、物静かな男だった。
あまり他の者たちと話しているところを見かけたことがなかったのだが、ある日彼はパドラスに近づいてきて話しかけた。

“パドラスさん、あなたは地球に長く住んでいたそうですね”
“ええそうです”
“地球は僕の憧れでした。
住んだことはないのですが、近くを宇宙船に乗って通り過ぎるときには、よく眺めていたものです。
あんなに美しい星は他にありませんね”

セムは何か思い出に浸るような、夢見るような面持ちだった。

“そう言ってもらえると嬉しいな”
“私の星アルカーナはとても年老いた星なんです。
いつも薄暗く煙っているので、別名「夕暮れの星」と呼ばれています。
太陽が死にかけているため人間も動物も植物も生きられない状態なのです。
私たちは空中ドームに住み移りました。
そこから自分たちの星が衰えて行くのを、見ているほかはありません”

セムがなぜいつも悲しそうなのか、パドラスはその分けが解った。
“それはお気の毒に。。。なんて言ったらいいか。。。”

“アルカーナは昔は地球に良く似た星だったんです。
太陽が輝いていて、オレンジの光を放っていました。
でも私たちの星を救うことはもうできないのです。
何にでも終わりがやってくるという事実を、受け入れなければなりません。
だから私たちはどこかの星に移住するしかないのです。
それで僕はこのプロジェクトに参加しました。
星づくりを学んで、昔のアルカーナのような星を作って、みんなでまた一緒に暮らせる日が来るようにと願っているのです”

“そうだったのですか?
立派な志しですね。
必ずその日が来ますよ。
まずはシュールを住み易い良い星に作ることに頑張りましょう。
それからあなたが自分の望む星を作ればいい。
その時は僕にもできるだけお手伝いさせてください”

“ありがとう、パドラスさん、ぜひお願いします。
なんか明るい未来が見えてきたな”

セムの憂いを秘めた顔が、初めて笑顔になった。

更新日:2023-03-09 20:42:56

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