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エメラルド・デイルのコミュニティー
ハイロは、もう60歳は超えているだろうに、がっしりとした身体と煌めく目を持つ若々しい男だった。
“私がなぜ今ここにこうしているのか、そのいきさつをお話ししましょう”
コミュニティーの集会所にテイランたちは通されると、なにかをすかして見るようなまなざしをして、ハイロは話し始めた。
“あれはもう20年も昔のことになります。。。”
そのころ、ハイロは都市に住み、毎日忙しく仕事をするという、ごく当たり前の生活をしていた。
だが、世界は荒涼としてくるばかりで、規制が厳しく、いつも誰かに監視され、社会の枠からはみ出ないように生きて行くのが嫌になってきた。
こんな生き方で良いのだろうか、何かが欠けているという思いがだんだん強くなってきて、自分の望む世界を夢見るようになっていった。
そのころから時々ヴィジョンを見るようになったのだが、それは美しい山間の草原に青い川が流れる光景だった。
それが一体どこなのか、なんの意味なのかは全くわからなかった。
そんなある日、昔の書類を整理していたら、古い新聞記事が出てきた。
それは分譲地の売り出しの広告で、そこに載せてある写真を見て彼はびっくりしてしまった。
なぜならその写真が、頻繁に見るようになっていたヴィジョンの風景と同じだったからだ。
ハイロはぜひその場所へ行ってみなくてはと思い、ある日、車を運転して出かけて行った。
そこは人里から離れていて、細い山道を通って行かなければならなかったが、山の頂上に達したとき、ついに眼下にあのヴィジョンの景色が現れたのだ。
分譲地として売り出される予定だったのが、何かの理由で取りやめになり、自然のままで残っていた。
木々に囲まれた緑の草原を突き抜いて、太陽にきらめきながら流れる川が見えた。
車を降りて歩いて下って行くと、またヴィジョンが見えてきたのだ。
それはあたりに小屋が建ち、人々が平和に暮らしている光景であった。
そして誰かの囁く声が聞こえた。
“蒔かれた種よ、風に吹かれてこの地に帰れ。
集まって来い、私の子らよ”。
“その時受けた衝撃は忘れることができません。
まるで雷に打たれたように、私は何が何でもこの地に住まなければと思ったのです”
町へ帰るとハイロは直ちに仕事を辞めて、家族と共にこの土地へと移ってきた。
“電気も水道もない、全くの自然の中で暮らし始めました。
私と息子で小屋を建てて、川から水を汲み、魚を取り、木の実や草を集めて食べました。
自然の生活というものは、本当に体も心も生きてくるものなのです”
そのうちに同じ考えを持つ人々が徐々に集まってきて今の村となったのだ。
“解りました。
私たちは任務だからというのではなく、ぜひあなた方を助け出さなければならないと思います。
カぺル、この地方に昔から住む人々について調べてくれ”
「エメラルド・デイルと呼ばれる平原に、約2万年前、リア星から宇宙船に乗った2000人がやってきて住み着いた。
肥沃な土地、豊富な水と自然の食糧、そのうえエメラルドの鉱山があり、リア星人たちはエメラルドを燃料にしたり、様々のものを作り出して、国として繁栄し、文化も高度に進歩した。
ところが、一万年ほど前からザルファ人が人々に憑依し始めて、争いが起こるようになった。
その後ザルファ人は勢力を増し、近年では地球Bの人口99%を支配している」
テイランは自分の掌に現れたデータを読み上げた。
“私がなぜ今ここにこうしているのか、そのいきさつをお話ししましょう”
コミュニティーの集会所にテイランたちは通されると、なにかをすかして見るようなまなざしをして、ハイロは話し始めた。
“あれはもう20年も昔のことになります。。。”
そのころ、ハイロは都市に住み、毎日忙しく仕事をするという、ごく当たり前の生活をしていた。
だが、世界は荒涼としてくるばかりで、規制が厳しく、いつも誰かに監視され、社会の枠からはみ出ないように生きて行くのが嫌になってきた。
こんな生き方で良いのだろうか、何かが欠けているという思いがだんだん強くなってきて、自分の望む世界を夢見るようになっていった。
そのころから時々ヴィジョンを見るようになったのだが、それは美しい山間の草原に青い川が流れる光景だった。
それが一体どこなのか、なんの意味なのかは全くわからなかった。
そんなある日、昔の書類を整理していたら、古い新聞記事が出てきた。
それは分譲地の売り出しの広告で、そこに載せてある写真を見て彼はびっくりしてしまった。
なぜならその写真が、頻繁に見るようになっていたヴィジョンの風景と同じだったからだ。
ハイロはぜひその場所へ行ってみなくてはと思い、ある日、車を運転して出かけて行った。
そこは人里から離れていて、細い山道を通って行かなければならなかったが、山の頂上に達したとき、ついに眼下にあのヴィジョンの景色が現れたのだ。
分譲地として売り出される予定だったのが、何かの理由で取りやめになり、自然のままで残っていた。
木々に囲まれた緑の草原を突き抜いて、太陽にきらめきながら流れる川が見えた。
車を降りて歩いて下って行くと、またヴィジョンが見えてきたのだ。
それはあたりに小屋が建ち、人々が平和に暮らしている光景であった。
そして誰かの囁く声が聞こえた。
“蒔かれた種よ、風に吹かれてこの地に帰れ。
集まって来い、私の子らよ”。
“その時受けた衝撃は忘れることができません。
まるで雷に打たれたように、私は何が何でもこの地に住まなければと思ったのです”
町へ帰るとハイロは直ちに仕事を辞めて、家族と共にこの土地へと移ってきた。
“電気も水道もない、全くの自然の中で暮らし始めました。
私と息子で小屋を建てて、川から水を汲み、魚を取り、木の実や草を集めて食べました。
自然の生活というものは、本当に体も心も生きてくるものなのです”
そのうちに同じ考えを持つ人々が徐々に集まってきて今の村となったのだ。
“解りました。
私たちは任務だからというのではなく、ぜひあなた方を助け出さなければならないと思います。
カぺル、この地方に昔から住む人々について調べてくれ”
「エメラルド・デイルと呼ばれる平原に、約2万年前、リア星から宇宙船に乗った2000人がやってきて住み着いた。
肥沃な土地、豊富な水と自然の食糧、そのうえエメラルドの鉱山があり、リア星人たちはエメラルドを燃料にしたり、様々のものを作り出して、国として繁栄し、文化も高度に進歩した。
ところが、一万年ほど前からザルファ人が人々に憑依し始めて、争いが起こるようになった。
その後ザルファ人は勢力を増し、近年では地球Bの人口99%を支配している」
テイランは自分の掌に現れたデータを読み上げた。
更新日:2023-03-09 20:47:28