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第6話「ククの想い」
1
いつからであろうか
これほど仕事に人生を忙殺されるようになったのは――
自分の恩師である杏仁智広からほぼ強引に十賢者のメンバーに押し込められたときからだろうか
それとも大魔導師フミコの侵略により十賢者のグランドマスターに就任させられたときからであろうか
それともシオリ事件を引き起こしたシオリをかばってからであろうか
もはやなにも覚えていない。
自分に似つかわしくない地位を与えられ、使命を与えられ、責任をとらされ、懸命に働けどもすべて裏目に出て多くの人々に憎まれる。
しまいには自分の愛弟子シオリには裏切られる始末
そしてシオリをかばったことでもう一人の弟子ハルカにも愛想つかされ、今ではリカを除く十賢者からは反感を抱かれるようになってしまった。
そして大切な娘にもどのように愛情を注いでいいかわからず、結局なにもできないでいる。
ハウスキーパーのマユミにも呆れられ、今回の新しい求人を出したことにクミからも反感を抱かれた。
“ 君はいずれ世界を救う大魔導師になる。フミコ以来の天才児だ ”
それは自分の恩師杏仁智広に言われた言葉だったが今となっては自分を奮いだたせるための妄言だったのだろう。
自分は結局何を成し遂げられたのか今ではわからなくなっていた。
自分よりずっと弱く、泣き虫で人並み以下の才能しかなかったリカはいまや十賢者の頂点に君臨する存在となり、トロロ星最高の頭脳となり、司令塔となっている。
別に彼女のことは嫌いではないしむしろ尊敬しているしどんなことをやらかしても常に自分の味方でいてくれることはうれしかった。
だが最近ではそれも惨めに思えてきた。
どうして自分だけが何もかもうまくいかないのか……
どこで人生を間違えてしまったのか……
誰もそれを教えてくれない。
昔は友達と言える人などだれもいなかった。リカと出会ってから彼女を通じて多くの人たちと出会い、少しはコミュ障もましになったと思いこんでいた。
昔は傲慢だったし刺々しかったし、誰も寄せつけない空気を放っていた。
結局リカがいるからまわりが寄ってくるだけで決して自分が引き寄せたのではない。
そして自分の弟子となり、自分の後継者となるはずだったシオリは今や大犯罪者。
各地で指名手配となり、今もなお多くの人々を傷つけているという。
そして彼女は違う、そんな人ではないとかばえばかばうほど自分は仲間を失っていった。
自分には見る目がないのだろうか
そしてどうすれば失った信頼を取り戻せるのだろうか
ずっとその事ばかり考えてしまう自分がいた。
いっそのこと楽になりたかった。
生きていることじたいが苦痛でしかたない。
久しぶりに帰った家には誰もいなかった。クミもリカ屋敷で療養している。きっと彼女もなにもかもうまくいっていないのだろう。
どんな言葉をかけていいかもわからず、結局放置してしまっていた。
クミがリカにすがるのはごもっともだ。役に立たない自分が腹立たしい。
だれもいない自宅のソファーでククは泣きながら一夜を明かした。
いつからであろうか
これほど仕事に人生を忙殺されるようになったのは――
自分の恩師である杏仁智広からほぼ強引に十賢者のメンバーに押し込められたときからだろうか
それとも大魔導師フミコの侵略により十賢者のグランドマスターに就任させられたときからであろうか
それともシオリ事件を引き起こしたシオリをかばってからであろうか
もはやなにも覚えていない。
自分に似つかわしくない地位を与えられ、使命を与えられ、責任をとらされ、懸命に働けどもすべて裏目に出て多くの人々に憎まれる。
しまいには自分の愛弟子シオリには裏切られる始末
そしてシオリをかばったことでもう一人の弟子ハルカにも愛想つかされ、今ではリカを除く十賢者からは反感を抱かれるようになってしまった。
そして大切な娘にもどのように愛情を注いでいいかわからず、結局なにもできないでいる。
ハウスキーパーのマユミにも呆れられ、今回の新しい求人を出したことにクミからも反感を抱かれた。
“ 君はいずれ世界を救う大魔導師になる。フミコ以来の天才児だ ”
それは自分の恩師杏仁智広に言われた言葉だったが今となっては自分を奮いだたせるための妄言だったのだろう。
自分は結局何を成し遂げられたのか今ではわからなくなっていた。
自分よりずっと弱く、泣き虫で人並み以下の才能しかなかったリカはいまや十賢者の頂点に君臨する存在となり、トロロ星最高の頭脳となり、司令塔となっている。
別に彼女のことは嫌いではないしむしろ尊敬しているしどんなことをやらかしても常に自分の味方でいてくれることはうれしかった。
だが最近ではそれも惨めに思えてきた。
どうして自分だけが何もかもうまくいかないのか……
どこで人生を間違えてしまったのか……
誰もそれを教えてくれない。
昔は友達と言える人などだれもいなかった。リカと出会ってから彼女を通じて多くの人たちと出会い、少しはコミュ障もましになったと思いこんでいた。
昔は傲慢だったし刺々しかったし、誰も寄せつけない空気を放っていた。
結局リカがいるからまわりが寄ってくるだけで決して自分が引き寄せたのではない。
そして自分の弟子となり、自分の後継者となるはずだったシオリは今や大犯罪者。
各地で指名手配となり、今もなお多くの人々を傷つけているという。
そして彼女は違う、そんな人ではないとかばえばかばうほど自分は仲間を失っていった。
自分には見る目がないのだろうか
そしてどうすれば失った信頼を取り戻せるのだろうか
ずっとその事ばかり考えてしまう自分がいた。
いっそのこと楽になりたかった。
生きていることじたいが苦痛でしかたない。
久しぶりに帰った家には誰もいなかった。クミもリカ屋敷で療養している。きっと彼女もなにもかもうまくいっていないのだろう。
どんな言葉をかけていいかもわからず、結局放置してしまっていた。
クミがリカにすがるのはごもっともだ。役に立たない自分が腹立たしい。
だれもいない自宅のソファーでククは泣きながら一夜を明かした。
更新日:2023-04-04 21:14:14