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 初めてクミちゃんを見た時、なんて素敵な女の子なんだろうと思った。

 真っ白な肌にサファイア色に輝く宝石のような瞳
 腰まで伸びた薄青色の髪を頭の後ろでピンク色のシュシュで束ね、ポニーテールにしている。
 少女としての可憐さはもちろんのこと、誰にでもわけへだてなく優しくて心も澄みきっている。
 賢くて強くて凛々しくて、優しくて、かなりエッチで(あくまで噂だけれども)……
 
 まさに完全無欠とはクミちゃんのために作られた言葉なのかもしれない。今となっては私の夫となったリウスさんだけれども彼は今でも彼女のことを想い続けている。
 たとえどれほど私が彼を想い続けたとしてもその付け入るスキはないだろう。
 
 ウッタッタ一族は元来自由恋愛が禁じられている。どのみち彼は愛するクミちゃんとは結婚できないことになっている。たとえ私でなくとも彼はウッタッタ一族の女性のいずれか、あるいはオルフィー王が定めた相応の貴族と結婚することとなっている。
 それがウッタッタ一族の掟……
 巷ではウッタッタ一族の結婚生活の多くは愛がないといわれているが実際そんなことはなかった。たしかに結婚当初はお互い初対面であり、これまで恋愛経験もないもの同士だからどう接していいかわからず喧嘩することも多い。
 
でも時間をかけてゆっくり愛を知り、育んでいこうと努力しあうため(できないカップルもいるけど……)
 次第にそれなりに夫婦らしくなっていく。お互いにささやかな幸せを大切にしながら愛し合い、生涯添い遂げる。もちろん許嫁制度にもたくさんの問題点はある。でも多くの一族メンバーがこの制度を支持していたためウッタッタ一族の許嫁制度は長年続いた。
 ウッタッタ一族には理不尽な規則も多いが恋愛弱者である私にとってこればかりは嬉しい制度でもあった。
 そう信じていた。
 でも……
 リウスさんにとってはこの制度はあまりにも残酷すぎたのかもしれない。
 幼い頃からゆっくりと愛を育んできたクミちゃんをある日突然手放さなければならなくなった。
 そして見ず知らずの私といきなり夫婦になることを強要された。
 彼は最近になるまでウッタッタ一族の許嫁制度を知らなかったという。ずっと昔からクミちゃんと一緒になりたいと願い続けた彼にとってこれは死刑にも近い宣告だったのかもしれない。
 
 それでも彼はとても優しいから私のことをとても良くしてくれる。特に最近は。
初めて出会った日からもう二ヶ月近い日々が経過しようとしていた。
お互いにぎこちなくうまくできなかった初夜
でも最近、彼も精通をむかえ、名実ともに大人になり、それからは本格的に妊活をはじめた。
 ウッタッタ一族にとって子孫繁栄は喫緊の課題であり、シオリ戦争で多くの死亡者が出て以来、ノルマもかなり厳しくなった。
初潮を迎えたウッタッタ女子は定期的に王医の診断を受ける義務が課せられる。
そして妊娠、出産に差し支えない体になったらすぐに婚姻を余儀なくされ、妊娠に向けて動き出さなければならない。
 ウッタッタ女性陣の多くは安産型であり同世代の女性と比べると早熟であることが多いため、平均十四歳くらいになれば安心して妊娠することができるという。
 でも当然、心の準備ができていない女子たちは多い。そして男子もまた……

 むしろ男子のほうが苦しいのかもしれない。十二歳になってまもなく所帯を持たされ、家族を守る責任を押し付けられる。早く精通をむかえた男性陣は最速十三歳で父親になる。
 傍やウッタッタ男子以外の同世代はまだ学生であり、中等課程のさなかであり、まだ青春を謳歌している。
 自分ももっと自由に生きたい。自分らしく、ゆっくりと自分の人生を考えたい。
 多くのウッタッタ男性陣はそう思っているに違いない。そして彼も……
 
 すこしでもいい。彼を喜ばせたい。彼の癒しになりたい。そのためにできることをやろう。
彼が出たあと、私も身支度をしてウッタッタ女房寺子屋へ向かった。

更新日:2023-02-08 10:29:52

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