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第5話「モモの愛情」
1
6012年8月11日リウス邸――
「じゃあ行ってくる。あとは頼むぞ」
「はい! えっと……」
玄関でモモはリウスの曲がったネクタイを正した。
「ああ、悪いな。モモ」
「いいえ、いいえ。今日は無事に終わるといいですね」
「まったくだ。昨日もユウタ問題でサビ残だ。もううんざりだ」
「今日も鶏の唐揚げを作りましょうか?」
モモはリウスをいたわるように言う。
「いいやさすがに四日連続だし飽きたかな、まあうまいんだけど、今日はオムライスがいいや」
「はい、モモにお任せあれ。では帰りにトマトケチャップと卵を買ってきますね」
「いいや、モモも忙しいだろうから俺が行くよ」
リウスは財布に入っている金額を確かめた。
「卵……最近までは五千ポルで買えていたけど原材料費の高騰で三倍に跳ね上がっているかもしれない。もし買えなかったらごめん」
「いいのですよ。鶏肉も卵も高級品ですからね。もしちょっとしか買えなかったらリウスさんだけでも食べてください」
「いいやそれはモモだろ、これから妊娠して赤ちゃん育てないといけないのに俺が食べてどうするんだ。とりあえず栄養あるものなにかしら買ってくる。タンパク質豊富なやつ」
リウスは金庫から札束を数十枚取り出す。
そして頬を紅潮させるモモにキスをして家を出た。
(これくらいしないとモモもかわいそうだろう……)
モモは自分に恋をしている。
どうしてなのかはわからない。だが日々、彼女と情事を重ねるたびに彼女は演技でなく、本当に自分を強く想っていることが伺えた。
それは夫としてうれしかったのだが素直に喜ぶこともできなかった。
自分はまだクミのことが好きなのだから。
でも今ではモモは自分の妻、大切にしないといけない。
それはモモだけでなくウッタッタ一族に対して失礼、いいや謀反に値する。
クミのことは忘れなければいけない。
でも忘れられない。自分のその浮ついた心が時折モモを傷つける。
スッキリと気持ちを切り替えられればこんなに苦労しないのに……
彼女と過ごした思い出が脳裏に蘇っては消え、自分の目頭を熱くする。
「ああ、ちくしょう。どうして俺は!」
自分の頬を叩き、彼は自分を律した。
6012年8月11日リウス邸――
「じゃあ行ってくる。あとは頼むぞ」
「はい! えっと……」
玄関でモモはリウスの曲がったネクタイを正した。
「ああ、悪いな。モモ」
「いいえ、いいえ。今日は無事に終わるといいですね」
「まったくだ。昨日もユウタ問題でサビ残だ。もううんざりだ」
「今日も鶏の唐揚げを作りましょうか?」
モモはリウスをいたわるように言う。
「いいやさすがに四日連続だし飽きたかな、まあうまいんだけど、今日はオムライスがいいや」
「はい、モモにお任せあれ。では帰りにトマトケチャップと卵を買ってきますね」
「いいや、モモも忙しいだろうから俺が行くよ」
リウスは財布に入っている金額を確かめた。
「卵……最近までは五千ポルで買えていたけど原材料費の高騰で三倍に跳ね上がっているかもしれない。もし買えなかったらごめん」
「いいのですよ。鶏肉も卵も高級品ですからね。もしちょっとしか買えなかったらリウスさんだけでも食べてください」
「いいやそれはモモだろ、これから妊娠して赤ちゃん育てないといけないのに俺が食べてどうするんだ。とりあえず栄養あるものなにかしら買ってくる。タンパク質豊富なやつ」
リウスは金庫から札束を数十枚取り出す。
そして頬を紅潮させるモモにキスをして家を出た。
(これくらいしないとモモもかわいそうだろう……)
モモは自分に恋をしている。
どうしてなのかはわからない。だが日々、彼女と情事を重ねるたびに彼女は演技でなく、本当に自分を強く想っていることが伺えた。
それは夫としてうれしかったのだが素直に喜ぶこともできなかった。
自分はまだクミのことが好きなのだから。
でも今ではモモは自分の妻、大切にしないといけない。
それはモモだけでなくウッタッタ一族に対して失礼、いいや謀反に値する。
クミのことは忘れなければいけない。
でも忘れられない。自分のその浮ついた心が時折モモを傷つける。
スッキリと気持ちを切り替えられればこんなに苦労しないのに……
彼女と過ごした思い出が脳裏に蘇っては消え、自分の目頭を熱くする。
「ああ、ちくしょう。どうして俺は!」
自分の頬を叩き、彼は自分を律した。
更新日:2023-02-08 00:11:12