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第4話「時を超えた絆」
1
「ふうーん、気持ちいい。クミちゃんもしっかり温まらないとね」
リカ屋敷の大浴場の中に私はいた。地面に打ちひしがれて泣いているところ、突然彼女があらわれて私をここに連れてきたのだった。彼女は私のとなりで頬を赤らめ、股を全開きにし、頭の上に白いタオルをのせ、目を棒にしてうっとりと湯船につかっていた。
他人行儀なところはまったくなく、親子水入らずのような雰囲気……
いいや親子といえども私とお母さんではこんなにはならない。
同性といえども第二次性徴が始まった自分の体を見られるのはお母さんでも恥ずかしいし、なんならば一緒にお風呂に入ることはこれまで一度もなかった。
(幼い頃はマユミさんにいれられていたらしい)
でもなんでだろう……
リカ様は全くの他人だからか逆にそれほど羞恥心を覚えなかった。
そもそも彼女は自分の裸をジロジロ見ていないしここに連れてきてからはずっと目を棒にして、天井の方を向いてぼうっとしていてなんだか火照っている。そして珍しくこの時間は他に誰もいなかった。
(リカ屋敷の大浴場は四百人以上もいる屋敷の住人達が共有して使うためにだれもいないことは珍しいらしい)
いつからだったか……
本当に悲しくて苦しい時、ホッとできる場所ができていた。
そしてその場所は不思議と懐かしさを感じたのだった。
他人なのに他人じゃない。そして不思議なことに自分のことをよくわかっている
リカ様は私にとってそういう人だった。
リカ・エメラルド
十賢者のグランドマスターにしてトロロ星で最も尊敬されているといわれる大魔導師
彼女は『エメラルドの守護人』と呼ばれており、友達のヒカルちゃんは彼女のことを『地上界最強の天使であり知将』と断言していた。
私から見ても彼女は他の十賢者とは別格の存在であることは間違いなかった。
でもそんなすごい人のはずなのに十賢者としての畏怖の念が全くわかない。
謙虚で背伸びせず、ありのままの自分をさらけ出し、涙もろい。
どこか抜けており、愛らしく、とても親しみやすい女性だった。
「あの……私ならば大丈夫です。これでも体だけは丈夫なので」
「あれ、そうかな、いくら体が強いといっても大雨に打たれて体を冷やしちゃ風邪ひいちゃうわよ」
リカ様はゆったりとした口調でつぶやいた。
「ごめんなさい、心配かけました」
「ううん、私こそごめんね。無断でクミちゃんを連れてきちゃって。お母さん、しばらく仕事で席を外せないみたいだったしマユミさんは有給休暇で行方わからなかったからつれてきちゃった」
「いいんです。お母さんには心配かけたくないですから」
「そう……心配ね……」
「ふうーん、気持ちいい。クミちゃんもしっかり温まらないとね」
リカ屋敷の大浴場の中に私はいた。地面に打ちひしがれて泣いているところ、突然彼女があらわれて私をここに連れてきたのだった。彼女は私のとなりで頬を赤らめ、股を全開きにし、頭の上に白いタオルをのせ、目を棒にしてうっとりと湯船につかっていた。
他人行儀なところはまったくなく、親子水入らずのような雰囲気……
いいや親子といえども私とお母さんではこんなにはならない。
同性といえども第二次性徴が始まった自分の体を見られるのはお母さんでも恥ずかしいし、なんならば一緒にお風呂に入ることはこれまで一度もなかった。
(幼い頃はマユミさんにいれられていたらしい)
でもなんでだろう……
リカ様は全くの他人だからか逆にそれほど羞恥心を覚えなかった。
そもそも彼女は自分の裸をジロジロ見ていないしここに連れてきてからはずっと目を棒にして、天井の方を向いてぼうっとしていてなんだか火照っている。そして珍しくこの時間は他に誰もいなかった。
(リカ屋敷の大浴場は四百人以上もいる屋敷の住人達が共有して使うためにだれもいないことは珍しいらしい)
いつからだったか……
本当に悲しくて苦しい時、ホッとできる場所ができていた。
そしてその場所は不思議と懐かしさを感じたのだった。
他人なのに他人じゃない。そして不思議なことに自分のことをよくわかっている
リカ様は私にとってそういう人だった。
リカ・エメラルド
十賢者のグランドマスターにしてトロロ星で最も尊敬されているといわれる大魔導師
彼女は『エメラルドの守護人』と呼ばれており、友達のヒカルちゃんは彼女のことを『地上界最強の天使であり知将』と断言していた。
私から見ても彼女は他の十賢者とは別格の存在であることは間違いなかった。
でもそんなすごい人のはずなのに十賢者としての畏怖の念が全くわかない。
謙虚で背伸びせず、ありのままの自分をさらけ出し、涙もろい。
どこか抜けており、愛らしく、とても親しみやすい女性だった。
「あの……私ならば大丈夫です。これでも体だけは丈夫なので」
「あれ、そうかな、いくら体が強いといっても大雨に打たれて体を冷やしちゃ風邪ひいちゃうわよ」
リカ様はゆったりとした口調でつぶやいた。
「ごめんなさい、心配かけました」
「ううん、私こそごめんね。無断でクミちゃんを連れてきちゃって。お母さん、しばらく仕事で席を外せないみたいだったしマユミさんは有給休暇で行方わからなかったからつれてきちゃった」
「いいんです。お母さんには心配かけたくないですから」
「そう……心配ね……」
更新日:2023-01-31 00:00:40