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第14話「光と闇の闘い」

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 6012年10月28日夜更けマガタ国――
 
 夜空には闇に抱かれた漆黒の空に紛れながら無数の魔虫軍団がマガタ国のあらゆる地区に舞い降りていった。数兆を超える人食いイナゴやオオスズメバチ、千体を超える全長五メートルの巨大蜘蛛(ドクロスパイダー)、五百体を超える全長五十メートルほどのオオムカデ、地を這う無数のヒト喰い軍隊アリが無差別に人々に襲いかかっていった。
 だがその魔虫達もガタノソアという少年にとってすべて生み出された。だがまだ試作段階でありその数も五十分の一にも満たなかった。ガタノソアはかつて暗黒四天王だったフミコの弟子の一人であり、フミコが死に、空席となった暗黒四天王の座を狙う闇の魔導師の一人だった。
 だが彼もまたジンと同様、エージェントにまで出世した若き天才であり、数か月前にジンとの個人戦に敗れはしたものの軍事力においては彼より上だと闇由里(レディナス卿)に褒められた経緯がある。
 現在暗黒四天王の席についているのはマリス・デッドウッド、イヌイ・クライゼン、ユーデリカ、ミドラーであるがマリスを除けばここ最近は入れ替えが激しかった。
 闇由里に力を与えられた魔導師はこの星に限った話ではなく、知的生命体が存在するすべての惑星に点在する。そしてそのなかでも闇由里に代わって迷える子羊たちに力を与える権限を持ったエージェント(代理人)についた闇の魔導師は自分を含めて少なくとも五百人は存在するらしい。
 群雄割拠の末にその頂点に君臨した四人は天才の中の天才だった。彼は自分もその四人に選ばれる天才であると確信を抱き続けていた。
 なぜならばかつて千年近くも暗黒四天王の座を守り続けたフミコが自分を認めたのだから。フミコは自分のことを後継者として認め、彼女の悲願を自分に託し死んでいった。
 以前ジンには弱虫野郎と罵倒され、自分の愛虫達に唾をかけられたが地獄で見守るフミコの期待に応えるために彼は歯を食いしばり、絶対に誰よりも強くなると決意した。
 彼もまた野心と憎しみに燃えていた。
 
 ガタノソアがまいた魔虫軍団はマガタ国の護衛部隊を大いに苦戦させた。だが彼の喜びもつかの間だった。魔虫軍団を放ってから五分が経過した今、少なくとも五十万以上のマガタ人民は食い殺したが、ここでいったん殺しのスピードは格段に落ちてしまった。
 攪乱されたマガタ騎士団をリカ・エメラルドが仕切り直したからだった。リカは、十賢者はもちろんのこと、美里レジェント、ナナの娘達をも自在に動かし、ヒロミの作戦を急遽変更させ、クミの救出に送るはずだったアリサ・イーズリーとマミ・イーライレリを魔虫軍団の襲撃現場に配置させた。そしてヒロミ自身もマガタ国の護衛に回し、魔虫軍団の猛攻に傷ついた人々の治療に尽力させた。
 ヒロミとアリサ、マミをはじめとする美里レジェント達は自分を中心に半径五十キロほどの巨大結界を作り、外部からの魔虫軍団の侵入を完全に遮断した。そしてその圏内にいるすべての魔虫たちをマガタ騎士団によって駆除させていった。
 鋼鉄以上のタフさを持つ鎧に包まれた巨大ムカデや巨大クモですらマミやアリサにプリンのように砕かれ、数の暴力は意味をなさなかった。
 もっとも厄介だったのは美里レジェント達によるマガタ騎士団メンバーへのバフ魔法だった。リカ・エメラルドはクミの危機を知りつつ、マガタ国の襲撃に対して冷静に考え、残された軍事力を適材適所に配置していった。
 
 闇由里卿はリカ・エメラルドがクミを救出するためにすべての軍事力をシオリ・カモミールに注ぎ込むと予想していた。これまでヒロミの意図を汲み、彼女の指示を忠実に守ってきたリカだったが今回ばかりは心を鬼にして多数が救われる決断をしたのだろう。
 “ シオリのもとに駆けつけさせればマミもアリサも瞬殺できたのにっ ”
ガタノソアは悔しさに顔を歪めた。だがリカはクミの救出のために自分がこの事態を収束させるまで時間稼ぎができると信じた精鋭を秘密裏にひとりだけ送ったのだった。

更新日:2023-07-30 08:30:08

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