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第12話「師弟の闘い」

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 6012年10月28日――
 クミがヒロミやマユミとともに感染地帯に飛び込んでから約一週間もの時間が経過した。ヒロミの思惑通り感染はほぼ鎮圧させることができた。生徒会長であり、シオリ派の幹部であるレナ・シークレットはオルフィー大学校から精鋭たちを数十人送り、クミの支援を命じた。
 メグミが加わることで百人力、いいや千人力となった。メグミはクミの治療法を一目見ただけで簡単に記憶して自分の血肉とした。クミの治療の傍ら、メグミはこの治療法を魔法医師に次々と教えていき、クミの後方支援として活躍した。
 
 クミだけならば到底なしえなかった偉業がメグミやレナ・シークレットの働きかけにより実現した。
「本当に感染を鎮圧させてしまうとはあっぱれだな」
 オルフィー王も今回ばかりは負けを認め、頭を抱えながら二人を王座の前まで招いた。
「いいえ、私たちのことを信じてくださり感謝申し上げます。スバル王」
 クミは謹んで王に頭を下げると隣に控えるメグミはウインクした。
「クミちゃんがいれば万事なんとかなるんです。クミちゃんは恋愛を除けば万事なんでもうまくやっちゃう才能があるんです」
 メグミがそういうとクミは若干苦笑した。
“ メグミちゃん、ひどいよー! ちょっとだけ立ち直ってきたところなのにー ”
「どうやらそのようだな。まあわしはこのものの恋愛事情は知らぬが今回の感染対策は完ぺきだった。だがそれ以上に彼女には多くの協力者がいることに驚いた。派閥問わずに多くの有力者を動かし、世界の歴史をも覆すほどの行動力はむしろ恐ろしくもある」
 スバル王はクミに感謝しているというよりかは未知なる生物への恐怖感を抱くような形相で彼女を見ていた。ウッタッタ一族は良くも悪くもトップダウン式の政治を好む。自分たちが一番上であり、自分たちより上である自分の存在を認めようとしない。
 あくまでもスバル王にとって従順であることが一番望まれる。王の思想を侮辱することは誰であってもタブーであり、メグミの発言は王の警戒心をあおるだけだった。
「私の願いはオルフィー国の発展であり、派閥を問わず誰しもが平和に過ごせる世界を目指すことです。そのためにできることならばこれからもオルフィー国のために尽力いたします」
 クミが必死に食い下がるように請願するとしばらく重い空気が漂った。
「なるほどな、少なくともお前個人的な見解は理解した。おぬし自身には悪意がないのは今回の件でよくわかった。だが知っての通り世界は個人の感情で動いているわけではない。すでにおぬしも知っているはずじゃ。貴族派もシオリ派もいまや個人の感情だけで動いていないということをな。そして今回の案件もしかり。我が意図しないところでウッタッタ一族の暴走があった。それはつまりシオリ派、いいやこの国の民についても同じことが言える。わしはウッタッタ一族にとって有益となる存在しか認めん。生きとし生けるものすべてが我らにとって益となるか害となるかによって評価を受け、それ相応の処遇を受ける」
「つまりウッタッタ一族にとって害となりうる存在はすべて排除するのでしょうか?」
「そのとおりだ、クミ君。君は賢い。それはトロロ十賢者についても例外ではない。十賢者のグランドマスターであるリカ・エメラルドが我らの敵であることが分かった瞬間、十賢者には確実な死が与えられる。天上天下唯我独尊。我らこそが神であり、絶対なる支配者である。そのことをよーく胸に刻み込み、これから我らに敬意を払い、服従を誓うのじゃ。彼女達にもそう伝えてほしい」
「わっわかりました」
 スバル王の威圧的な態度にはかなり腹が立ったがこれ以上彼を刺激することは危険だとクミは判断した。王はあくまでも高圧的であり、今回の件も自分の意にそぐわぬことをした問題児として立件して再発防止として警告した。
 あまりにもばつが悪すぎた。腹を立てたメグミが反論して何かを言おうとした瞬間クミは念力で彼女の口を強制的につぐませた。
「この国の平和を願う心がもし本物ならばシオリ・カモミールの首をここにもってこい。そうすればおぬしの忠誠心が本物だと認めてやろう」
 スバル王はそれだけ言うとゴホンと咳払いをして立ち上がった。隣に控える十賢者の一人であり王の片腕あるアダム・ウッタッタはクミに対して眉をひそめながら王に続いた。

更新日:2023-06-27 21:11:25

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